第8話 第三次直上決戦
3月16日 午前9時3分 プラボカ北西湿地地帯
「さて悪いが、こちらにも都合があるんでね。さっさと片づけさせてもらおうか。」
言うとカインは、再び突進した。バッツはつかさず剣で突きを防ぎ、手綱を引き、右に逃れる。それにカインは、ミスリルランスを右に振る。が、ブンッと音を立て風を切るのみだった。そこに僅かながらスキが出来る。長い柄を有する槍には、どうしてもスキが出来てしまう。
「くらえっ!」
「っ!」
バッツは叫び、カインは声にならぬ声を上げる。体を限界まで反り、必殺の剣戟をかわす。いや、かわしてはいなかった。バッツのアイアンソードは、火花をあげながら、カインの右の肩当てに横一文字にはしっていた。カインは大きく後ろに退き、体勢を整える。バッツも間をおき、息を整えていた。カインは右の肩当てを見やり、驚嘆した。
「驚いた・・・。ミスリス製の肩当てに傷を付けるとは・・・・。」
そこには明確に一筋の傷が走っていた。それもかなり深い。
「まさかっ?!ミスリルに傷つけたのか?!!」
バッツはこれ以上ない様な、驚いた顔をした。自分にそれだけの腕前があるとは思ってもいなかった。カインは再度傷を見やると、何故か口元に笑みを浮かべ、バッツに問うた。
「おい、お前の名は?」
僅かな間があき、返答が帰る。
「俺は、バッツ・クラウザーだ。」
「そうか。俺は、カイン・ハイウィンドだ。今度こそは、いざ、尋常に勝負!!!」
それを合図に両者が動いた。カインは、両手でミスリルランスの柄を持ち、低い姿勢を取りながら突進する。バッツはアイアンソードを突き出し、ボコを駆けらす。まさに両者がすれ違おうというその時、同時に攻撃を繰り出す。アイアンソードが振り下ろされ、ミスリルランスが標的めがけ牙をむく。が、双方紙一重の差でかわし、振り返りざまに第二撃を与える。剣と槍の攻防。攻めては守り、また攻め守る。その中でカインは、目の前の敵の動きに驚嘆していた。だが、カインはそれだけで終わる者ではなかった。
「これを避けられるか!?」
「!」
言うとカインは、持ち前の脚力で、一気に後退。十分な間合いを取る。
(どうする?!)
退くカインに対し攻撃するか否かに、一瞬迷うバッツ。その迷いは、カインが技を繰り出すのに十分な時間を与えてしまった。溢れる闘志を槍に、そして闘志をまとった槍はいかなる物をも粉砕しうる牙へ。ストックブレイク。一流の騎士のみに許される、絶対の一撃。バッツの目には闘志をまとった槍が光り輝いて見えた。だがその光は、バッツの命を奪う光だ。
(かわせない・・・?!!)
ストックブレイクに加え、今までにない速度で突進するカインをかわす術はない。
(今度こそ終わりかっ?!)
今までに幾度となく誰かに助けられ、ここまで生きながらえていた。だが、もはやそれはない。命を狙い、狙われるこの乱戦の中では誰も助けてはくれない。恐怖か悔しさか、唇をかみしめカインを見据える。終焉を覚悟し、一瞬の痛みに備えるバッツ。だが、バッツを待っていたの死の痛みではなく、耳をつんざく様な金属音だった。
(どうした・・・?)
一瞬の間をおくと、そこには大剣を構えた金髪の男が、カインと対峙していた。クラウドである。バスタードソードの大質量で、ストックブレイクの衝撃を吸収したのだった。その光景を見て、つかさずクラウドに声をかける。
「クラウド!」
「こいつは俺が引き受けた。」
「だ、だがっ!」
「お前には荷が勝ちすぎる。」
「っ・・・!」
冷静なクラウドの言葉に返す事がなかった。考えればその通りだ。バロン軍の竜騎士団団長と戦おうというのだ。ソルジャー1STクラスの実力でなければ、勝ちはおろか、瞬く間に命を奪われるだろう。今度はカインがクラウドに向け、冷たい口調で言う。
「いきなり一対一の戦いに横槍を入れるとは・・・。騎士道に反するとは思わんのか?」
控えめの口調ながら、怒気が感じられる。クラウドがそれに静かに応じる。
「一対一の戦いだろうが、騎士道に反しようが、仲間の死を黙って見過ごす訳にはいかない。何より、奇襲を仕掛けておいて何を言う??」
「まぁ、いい。お前を倒して、すぐにバッツを料理してやるさ。おい!戦いが終わるまでジッとしてろよ?」
これにクラウドが付け加える。
「俺からも頼む。俺が討たれたら、仇を取ってくれ。まぁ、そんな事はないが。」
「ハッ、お前もすぐに料理してやるさ!細切れにしてやる!」
それを合図に戦いが再開された。先手はクラウドである。第一撃。横一文字にバスタードソードが閃いた。それを屈んで避け、下から上へとミスリルランスで突くカイン。これをクラウドが避ける。間をおき、バスタードソードを振り上げる。が、これを後ろに飛び、かわすカイン。お返しだと言わんばかりに、突撃し、突きを見舞う。クラウドはあえてそれをバスタードソードで受け止め裁き、カインの顔面めがけ剣を振る。これでは槍が保たないと踏んだカインは右に身を反らし、かわす。カインのすぐそこをバスタードソードがゆき、地面に激突する。
「もらった!!」
カインはこれを待っていた。いくら強度のあるミスリルとは言え、相手のエモノの重量があれば、柄が折られてしまう。加えてクラウドの技量が加われば、槍の破壊は容易だろう。だから回避に徹しスキを狙い、一撃の下に葬り去る。クラウドの心臓めがけ、ミスリルランスを突き出す。これを何とか避け、串刺しを免れたクラウド。しかしミスリルランスは、右腕に深い裂傷をはしらせた。
「ぐっ・・・。」
苦しげな声が漏れる。出血量が、ただ事でない事を示している。剣を振り、カインを遠ざけ、体勢を立て直すクラウド。バッツはその様子を見守るしかなかった。
カインは絶好の勝機を逃した事に後悔しつつも、クラウドの技量に感服していた。
「なかなか・・・・。ウォルスがお前達の様な手練れをこの短期間でそろえるとな。道理で俺たちが押される訳だ。」
見ると赤魔道騎士の後に傭兵部隊が続き、さらにウォルス軍が続いていた。全体はともかく、この界隈はバロンが劣勢に立たされている。
「ならば、尚のこと、お前達を叩かねばなっ!!」
「まさか!」
バッツが思わず声を上げた。ストックブレイクを打つ気だ。再びミスリルランスが龍の牙へと変貌する。が、クラウドはそれに真っ向から立ち向かった。地面を蹴り上げる様に踏み込み、瞬く間にカインの目の前に躍り出る。そこにカインは槍をありったけの力を込め突き出すが・・・。
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