第8話 第三次直上決戦
 
3月16日 午前9時3分 プラボカ北西湿地地帯
 
銃声がそこらでこだまする。ぬかるみに足を取られたバロン軍に、容赦なくウォルス軍は銃弾をたたき込んだ。が、これに負けじとなおも進むバロン・カルナック軍。両者がゆっくりと、だが着実に距離を縮めてゆく。そして・・・。

「突撃〜!!」

ウォルス軍司令、ドーラ将軍の声が響く。それに応じて前列の隊が一斉に前進。続いて第2、第3波と、続々と湿地に身を投じる。 

一方、湿地で機動力を封殺され、緒戦の銃撃で予想以上の犠牲を払ったバロン・カルナック軍。セシルはいつになく指揮に檄を飛ばした。

「ここで負けては陛下に申し訳がつかない!総員、特攻精神をもってかかれっ!」

最前線では斬り合いが始まっていた。
 
「全速前進!!敵を切り抜けよ!!」

味方の援護射撃を背に、カイエンを筆頭とした傭兵部隊500人が、最前線に躍り出た。そしてその中には、バッツが率いる部隊の姿のあった。重軽傷者を後方に待機させ、残りは皆再び敵との戦いに身を投じていた。バッツ隊は皆チョコボに騎乗している。そのため必然的に彼らが先頭を行っていた。更にその先頭のバッツに、敵の姿が舞い込んだ。竜騎士団。バロン軍が誇る空の覇者。その中央の、隊長らしき人物が、自らの槍を高く高く空へと掲げた。

ミスリルランス。総ミスリル製の、軽く、それでいて丈夫な槍だ。スピアタイプとは違い、「突く」コトのみを追求したその鋭さは、まさに最強の矛と言えよう。そして、装備に軽さを求める竜騎士にとっては理想の槍と言えよう。これを持つ事が許されるのは、伝統あるバロン竜騎士団の中でも団長ただ一人。カイン・ハイウィンドのみである。

「行けッッ!」

槍の号令とカインの声で、一斉に竜騎士達が跳躍した。高い。速い。竜の名に恥じぬ跳躍。

「っ!かわせっ!!」

上空からの攻撃に、バッツはつかさず回避を命じる。その一瞬後、竜騎士達が槍を地面に向かって垂直に突き落とす。ドッと鈍い音を立て着地。それに紛れ込む悲鳴。どのような武術を極めようと、頭上は絶対の死角。そこに雨の如く槍が降り注ぐのだ。避けきれる訳がない。十数人が攻撃に倒れる。

「なんて奴らだ!?」

バッツは思わず敵の技量に舌を巻く。跳躍、空中での身のこなし、槍の扱い。が、敵の技量に圧倒されるだけではない。

「ひるむな!反撃!!」

負けじとバッツも必死だった。そして、カインも。

「死力を尽くせっ!生かして返すな!」

麾下の騎士らに言い聞かせ、自らも戦いの中心へ。

「どけっ、邪魔だ!」

ミスリルランスを前に突き出し、左右に振り、前方に道を造る。敵をかき分け、ねじ伏せた先に、他とは明らかに装いの異なる者がそこにいた。バッツである。カインの体は既に空中にあった。後は槍ごと体を落とすのみ。
 
「!クエッ!!」

ボコの悲痛な叫び。バッツが反応するより速くボコがその場から離れる。刹那、カインが空中から突如現れ、竜の牙の如き槍を突き立てていた。バッツはそれを見て呆然としながらも、

「ボコ、ナイスだ・・・。」

自分は全く気づかなかった。ボコが気づいていなければ、今頃は串刺しになっていた事だろう。カインは槍を持ち直し、バッツに言った。

「なかなかのチョコボだ。大事にしてやれよ。もっとも、俺と戦って生き延びられればの話だが。」

言うとカインは、槍を前方に突き出し、突進した。

「!!」

攻撃を裁くので手一杯だ。第一撃を、何とか裁き、間合いを取る。

「くそっ!」

バッツはここでカインに言い返してやろうと思ったが、良い言葉がない。パッと頭に浮かんだのは・・・。

「おい!いきなりは卑怯だろ!?」

カインはそれを聞くと、鼻で笑い、肩を震わせた。ゆるむ口元を抑えつつ、説き伏せる。

「おいおい、指揮官という地位にいるなら、奇襲される事くらい考えとくのが常識だぜ?」

「う・・・。」

辛辣で、真実だ。確かに自分が敵の指揮官を討つなら、奇襲をかけるだろう。言葉に詰まるバッツに、カインは更に続ける。

「さて悪いが、こちらにも都合があるんでね。さっさと片づけさせてもらおうか。」

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