第7話 激突

午後2時過ぎ バロン陣地から東1km

赤魔道騎士らは、緒戦の勢いが消え始め、次第に苦戦を強いられる様になった。頼みの綱の魔法にしても、その元である魔力が切れればそれまでだ。そうなると、斬り合いで勝負を決するほかないのだが、防具の耐久力と数で優位に立つ暗黒騎士団に軍配が上がりそうだ。だが、その流れを変えるにたる出来事が起こった。両軍がぶつかり合う中に、割り込む様にして駆ける一人の騎兵。他とは全く違う姿をしている。バッツである。その異形故に敵味方にすぐ知れ渡る。案の定、猛進するバッツの前に暗黒騎士らが立ちふさがる。が、邪魔だと言わんばかりにバッツに一蹴される。敵をちぎっては投げ、とはこの事だ。

「ありゃあ、隊長か?!」

「暗黒騎士をああも簡単に斬ってやがる・・・。」

それは敵味方をあ然とさせるにたる光景だった。バロンの誇る精鋭が、名もない一人の傭兵に為す術なく斬り伏せられているのだ。形勢は目に見えて揺らいでいる。赤魔道騎士らに闘志が蘇ったのだ。

「今が勝機だ!かかれ!!」

「叩き潰せっ!」

雪崩の如く押し寄せる赤魔道騎士。それに対し、逃げるか、返り討ちしか道のない暗黒騎士。このぬかるみの中、物を言うのは機動力だ。その点では、チョコボに騎乗している赤魔道騎士は非常に都合が良い。逆に、重装備で固めた暗黒騎士は格好の的となる。赤魔道騎士らはこれまでの借りを返すがごとく、剣を振る。まるで狩りの様だ。
もっともこれは、その日の糧を得るためではなく、単なる命の取り合いであるが。

「いいぞ、そのいきだ!」

剣を振るいながらも、士気を鼓舞するバッツ。それに答えようと、奮闘する騎士達。双方疲弊し始めた頃、バッツの元に一人の騎士がただならぬ様子で駆け寄ってきた。

「どうした?!」

「敵です!敵が増援をっ!!今すぐに撤退命令を!!!」

「分かった!」

知らせを聞き、一瞬の間をおき、肺につまるだけの空気をつめ、
「撤退〜!」

事を知らせた騎士は勿論、その場に居合わせた者全員がその声に一瞬動きを止める。だが、一瞬で良かった。それだけで赤魔道騎士らは状況を把握し、戦地から離脱してゆく。

「なっ、何?!」

「逃げる気か!」

暗黒騎士らは訳も分からずその場に立ちつくすのみ。招集の時間をおき、状況がつかめた所でもう遅い。チョコボの足があれば、追っ手など何の事はない。
バッツはボコを走らせながらも、後方に目をやった。見ればバロン軍が地を埋め尽くす様に展開している。
そして、ウォルス軍を討つがため、ぬかるみを行く。

「一体、どれ位になるんだ・・・?」

途方もない数だというのは分かる。が、バッツには目測もつかなかった。プロの兵士は正確な目測で敵の数を割り出すと言うが。その疑問に突然併走している騎士が答えた。
撤退を促した彼だ。

「あれなら、2万にはなります。」

「2万・・・。なんて数だ・・。」

口では言うものの、未だ実感が湧かない。だが、彼の心には任務をやり遂げたという確かな実感がそこにあった。戦いはいよいよ総力戦に突入する。前を見れば、ウォルス軍が迎撃準備を整えていた。

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