第7話 激突
午後2時過ぎ バロン陣地から東1km
「俺はどうしちまったんだっ!?」
意識を失ってどれだけ経っただろうか?だが光が体に定着したのは確かだ。全身におぼろげな光が宿っていた。それは何よりも力強く、優しい光だった。そしてその光は、バッツの装備品にも宿ったのか光を放ちなおかつ、その形を大きく変えていた。力強く隆起した肩当て、豪奢な篭手、子どもの背丈ほどはあろうかという赤みを帯びた剣。そして見切りの数珠に宿る確かな輝き。自分にただならぬ力が宿ったのは確かだ。ならばその力を使わぬ手はない。
「ボコっ、いけるか?!」
「クエッ!!」
ボコは力強く頷き、バッツは手綱を持てる力の全てを込め、握る。それを合図にバッツを中心とした戦いが始まった。
暗黒騎士達は光により視界を奪われたが、今はもうその光もない。
「生かして返すなっ!」
怒鳴る様に部下に命じる指揮官。暗黒騎士達は一斉にバッツに襲いかかる。
「くらえっ!」
一人の暗黒騎士が、バッツにその剣を振る。両手持ち。必殺の一撃。横に一閃。
が、バッツとて負けてはいない。
「そんなものか?!」
あえて避けず、自らの剣で攻撃を防いでいた。耳を裂く様な音をあげながら斬り結ぶが、暗黒騎士の剣の速さは、到底バッツに届く物ではなかった。
「どけっ!」
「なっ!!」
剣を弾かれ、その隙に後ろを取られる。そして一撃。騎士はその場に卒倒した。2人の暗黒騎士が前面から迫る。
残りも最大の武器である暗黒剣を繰り出すため、剣を構える。前面の2人に全速力で突進。剣を振るう暇も与えず、すれ違ったとほぼ同時に2人を紙屑同然に斬り伏せていた。
「どうなっている?!」
「こいつ、化け物か?」
それを見た周りの敵は瞬く間に混乱し始めた。並大抵の攻撃をものともしない鎧を、軽く斬りつける様に引き裂く相手に。驚異の腕の持ち主か、それとも計り知れぬ力を秘めたモンスターか。どちらにしても彼らにとって厄介以外の何者でもない。
「だが、貴様もこれで終いだ!!」
「!?」
その言葉がバッツの耳に入り込んだのは、その時だった。気づけばそこには暗黒の波。行く手を阻む全ての物を粉砕する、死の波だ。とっさに剣で受け止めるバッツ。が、むなしく波に飲み込まれ、辺り一面を焦がすのみ。盛大にわき上がる火柱は、両陣営から肉眼で確認出来た。もちろん、戦場でも。
「やった!」
一斉に暗黒剣を放った、全ての騎士達がそう思ったに違いない。だが、ユラリと動く黒い影。炎から出でる鬼神の如く。バッツとボコである。全くの無傷だ。
「ば、ばかな・・・。」
「あれで、立っていられるハズがない・・・。」
「何より、何であれをまともに喰らって生きてるんだ?!」
「次はどいつだ!?」
うろたえる敵にバッツは、叫び、剣を握り直し、突進する。
「く、来るなぁっっ!」
「うわあぁ!」
それはもはや戦いとは呼べなかった。バッツは退却しようと逃げる敵を見逃さない。背後をさらした敵など、数秒で片が付く。ただただ剣を振るのみ。
一人目。背後に横薙。一撃の下に倒れる。
二人目。相手が背後を確認しようと、振り返った瞬間に頭に一撃加える。
三人目。剣を構えるも、恐怖に支配されているのか、全く乱雑な剣だ。
ボコに右に左に動かしながら攻撃をかわし、つかさず側面から一撃。瞬時に三人の敵を切り伏せる。敵の動きが手に取る様に分かるのは、見切りの数珠の作用か?
「なんてヤツだ・・・。」
四人目はこう言い残して、バッツの剣の前に倒れた。周りを見渡すと、敵はもういない。バッツを囲っていた敵を彼一人が倒したのだ。
「ホントに、どうなってるんだ・・・?」
これがクリスタルの力か?だとすればクリスタルは覚醒し、自分たちに力を貸してくれるのか?バッツは、ポケットから布にくるんだクリスタルのかけらを見やった。布越しからも十分認められる光がそこにあった。
「本当に力があったんだ・・・・。」
やや懐疑的な口調でつぶやく。諸勢力がクリスタルを狙っている事については、疑う余地はないと考えていたが、クリスタルの力については半信半疑のバッツだった。だが、これでクリスタルが何らかの力を有する事が分かった。段々事態がつかめたところで、バッツは気づく。これは戦いを制するにたる力だ、と。バッツは闘志を宿した声でボコに言う。
「ボコ、行くぞ!」
「クエッ!」
威勢良く返すボコ。戦いはまだまだ続く。