第7話 激突

午後2時過ぎ バロン陣地から東1km

ウォルス軍は湿地の前に陣取り、敵の出方を見ていた。いつ戦いが始まっても良い様に兵士は皆、待機していた。
その中心部に、チョコボに乗った赤い鎧の一団があった。バッツの指揮する部隊である。バッツは右手首の数珠を見つめた。流石にここまで来ると緊張が抑えきれない。今にも押しつぶされそうな感じだ。だが、この見切りの数珠を見ていると、自然と緊張がほぐれる気がした。突然斥候からの緊張した声が響いたのはその時だ。

「敵部隊を確認!目測800m!およそ2万5千!!」

ここに陣取っているウォルス軍は総勢2万3千人。対するバロン・カルナック連合軍は2万5千。だが、ウォルス軍の2万3千は国中から絞りに絞ってやっと集まった数である。部隊編成も変則的で、統制は今ひとつである。対する相手は2カ国から成る連合軍だが、統制が取れており、実戦にも十分対応出来る。しかもその中にはバロンの誇る精鋭、暗黒騎士や竜騎士が配置されている。

ウォルス軍の唯一の救いは兵士の士気に衰えがない事だろう。その士気を更に強めるには緒戦が大切だ。つまり作戦の合否はバッツの双肩にかかっていると言って良い。援軍のめども立たず、これ以上の敗走も許されない。全てはこの一戦にかかっている。定刻、バッツはボコの手綱を持てる力の全てで引き、同時に剣を抜き、怒号を轟かせた。

「蹴散らせッ!」

「おおっ!」

「隊長に続けっ!!」

100余名の真紅の騎士達が、バッツを先頭に敵に斬りかからんばかりの勢いで前進し始めた。それをレナが、ファリスが、ガラフが、クラウドが、カイエンが、ウォルス全軍が見守った。対する連合軍は、早々にウォルス軍の動きを察知していた。

「敵部隊接近!距離500!数およそ100!!」

ヒステリックとも言える声が響く。総司令のセシルは、参謀のカインと共に迫る真紅の一団を凝視しながら激しく思考を巡らせた。

「100か・・。おびき寄せるつもりか。」とセシル。

「敵の誘いに乗る訳にはいかないな。この手のヤツらは、さっさとひねり潰すに限るな。敵の戦意をくじいておきたい。」

カインの確かな戦術眼が光る。セシルの考えも同じだった。

「ああ。では暗黒騎士団を出そう。4個小隊200人を出す。」

「200人もか?」

カインの疑問はもっともだ。この作戦に投入された暗黒騎士の、実に5分の4を投入しようと言うのである。が、カインの疑問はすぐに氷解した。一団は装備からして赤魔道騎士団。精鋭である。これに十分対抗するため、こちらも精鋭を出し、数で上回ろうという考えだ。セシルらしい、慎重で確かな判断だ。

「だがセシル、竜騎士団を動かしても良いんだが・・・。何なら連携でも取らせるか??」

「いや、竜騎士の機動力と打撃力は素晴らしいが、乱戦になると槍ではどうしてもそれが活かせない。かと言って連携を取らせると暗黒騎士が竜騎士の機動力に追従出来ない。」

長い柄を持つ槍は、敵との距離を置いて初めてその真価を発揮出来る。それを扱う竜騎士も乱戦では長所を活かせない。そして竜騎士の長所は、機動力にある。彼らは古来、竜に騎乗し戦う姿から竜騎士と呼ばれる様になった。今ではその所以である竜が姿を消しつつあり、竜に騎乗する事がなくなったから竜騎士とは名ばかり感が否めない。だがその代わり、鍛錬に次ぐ鍛錬により手に入れた、常人を遙かに凌ぐ脚力が彼らに竜の如き機動力を持たせた。更にそれを活かすための軽装備は、絶大な機動力をもたらし、本来の竜騎士に引けを取らない力を持たせた。対する暗黒騎士は、技の使用前後に少なからずスキが生まれる。それを補うため堅牢な鎧兜を身につけ、厚手の盾を持っている。だから防御と攻撃は強力無比だが、機動力は期待出来ない。つまり両者は対局の位置にあると言って良い。連携を取らすと、お互い足を引っ張る事になる。だからセシルは暗黒騎士だけで対抗しようと言うのである。
カインはそれに気づき、考えを取り消した。セシルは伝令の兵士に命令を下す。

「暗黒騎士、第1から第4隊、迎撃させろ!」

それから間もなく漆黒の騎士達が一団の前に立った。

「くそ、走りにくいぞ!こいつは・・・・?!」

バッツはボコに騎乗しながらも、ぬかるみに対して違和感を持たずにはいられなかった。ボコでぬかるみを駆けた事など一度もない。それでも一定の速力を保てるのは、ひとえにチョコボ種の足腰の強さと確固たる信頼があってだろう。しばらくぬかるみを駆けると、近くを走っていた騎士が駆け寄ってきた。

「隊長、暗黒騎士が前面に!」

言われてバッツは前方を凝視。見ると他とは明らかに違う装備と雰囲気を待った一団がいた。相手も陣地からかなり離れている。両者の距離は、あと100mとない。その時バッツは、一団から異様なまでの殺気を感じ取っていた。その正体は暗黒騎士のみが使う事を許された暗黒剣である。自らの暗黒闘志を剣に集中させ、一気に放出する。騎士でありながら距離をおく敵にも攻撃が出来るのが暗黒騎士の強みだ。バッツは暗黒騎士がどのような力の持ち主かは知らない。しかし、直感で感じ取った殺気から、相手が危険である事を知った。一団が一段と高まった暗黒闘志を放出する直前・・・。
「散開しろっ!!」

悲鳴にもとれる声を上げバッツは、部下達に散開を命じる。直後、暗黒騎士団から放たれた波動が、ぬかるみをなめる様に走る。漆黒の波が大地をえぐり取っていた。もし、バッツが散開を指示していなければ、多大な被害が出ていただろう。

「かまうなっ!前進しろっっ!!」

先の攻撃で畏縮してしまったのか、赤魔道騎士達は減速を始めていた。それに檄を飛ばすバッツ。第二撃より前に敵に接触し、接近戦を挑むつもりだ。それに闘志を取り戻したのか、赤魔道騎士達は再び元の速さで駆けだした。両者の距離はどんどん縮まりやがて、暗黒騎士団も身構える。

そして・・・。

戻る