午後12時43分 ウォルス領 カーウェン駅プラットホーム 後半1
その一団は、ランプを片手に闇夜を進んでいた。その数2万3千。カーウェンに集結したほぼ全てのウォルス軍である。しかしこれだけの部隊が移動するのは容易ではない。敵が潜んでないか、斥候を放ったりモンスターや敵の備えて警戒行動を取りながら進まねばならない。バッツの隊長としての初任務は、部下達と共に偵察をする事だった。偵察は隠密行動を取らねばならない。指示一つ出すにしても細心の注意を払わねばならない。これは良い訓練だ。
と、1人の部下がバッツに近寄ってきた。
「隊長、敵です・・・!数は約100。恐らく我らと同じ偵察部隊かと。装備からして、陸兵団のようです。」
それは小声ながらも、バッツは驚愕を覚えた。
「いかがされますか?」
しばし考える。ここにいるのは50人ほどの赤魔道騎士達。相手は100人の陸兵団。数では向こうが、実力ではこちらが勝っている。どうすべきか・・・。バッツは思考を巡らせる。
(今の任務は偵察だ。敵と戦う事じゃない。けど、こいつらがまだ前進するならば・・・。)
「しばらく様子を見よう・・・。退く様なら仕掛けない。まだ進むなら・・・・。」
「進むなら・・・?」
「こちらから仕掛ける。全員に伝えてくれ。」
「はっ!」
兵士はチョコボにまたがり、静かに移動する。この辺りは起伏に富んでおり、身を隠す事に苦労しない。
全員が速やかに岩や窪地に隠れる。一方その頃、自分たちが既に見つかっている事に気づいていないバロン兵らは”一応”任務をこなしていた。と言うのも、暗闇の中をランプ片手にただただ歩き回り、無駄話に花を咲かしていたからだ。彼らは油断していた。既に自分たちに2度敗北した相手が、自分たちを攻撃するなど考えられない事だからだ。幾つにも分かれた分隊の内、1人のバロン兵があくびをしながら言った。
「ふあぁ・・・。偵察って言っても、こんな所に敵は潜んでるって言うのか??ばかばかしいぜ。」
「そう言うな。これで給料もらってんだ。」
「ああ、安月給だがなぁ。」
「へっ、違いない。それにしても王も分からん事をする・・・。
軍備に金をかける前に俺たちの給料をどうにかして欲しいモンだ。」
彼らは不用心にも起伏に富んだ方へを歩いてゆく。彼らの先にはバッツが直接率いる部隊がいる。バッツが、いや、その場に居合わせたウォルス兵全員が手に汗を握った。
(来るか・・・!!)
息を殺し、影に姿を潜める。すぐそこにはバロン兵。
「あぁ、早く本国に帰りたい・・・。」
とまた無駄口を叩くバロン兵だったが、彼が無駄口を叩く事はもうなかった。音もなく、夜の暗闇に溶ける様に倒れる。
「ん?おい、どうした?!」
同僚の1人が気づき、腰をかがめ、声をかける。背後にはバッツ。ボコに騎乗しながらも気配を消している。
「がっ!」
と、同僚に声をかけた兵士が押し殺した様な声を上げた。アイアンソードがのどを貫く。
「な、何だ!?」
残りの兵士らが慌てて剣に手をかける。
「わぁー!」
雄叫びをあげるバッツ。それに反射的に剣を抜くバロン兵。数は3。だがバッツの方が技量が上だし、ボコに騎乗している。視界が悪いが、それはお互い様だ。
「ぐふっ・・・。」
「あっっ・・・。」
素早く2人を切り捨てる。残る1人は震える手で剣を持つ。
「くっ、くっ、来るなぁ・・・!!?」
が、バッツは非情にもボコの手綱を引き、ボコは弾かれた様に加速する。バロン兵を切り捨てていた。
「仕掛けろー!!」
バッツは敵を倒すと、今度はいきなり叫びをあげた。それに赤魔道騎士らが答える。
「突撃っ!!」
影に隠れていた騎士達が一斉に飛び出した!いきなりの敵襲にうろたえるだけのバロン兵たち。
「うわぁ〜!」
叫び、逃げるバロン兵。しかし暗闇の中では思う様に進めない。がら空きの背後に魔法がたたき込まれる。
「ぐえ・・!」
無様な断末魔の叫びをあげ、背中を黒こげにして倒れるバロン兵。それを見た別の兵士は思わず叫びをあげた。
「こいつら、赤魔道騎士か!?」
「こ、こんな奴らにかなうはずがない・・・!」
これまでの鈍い動きがウソの様に、バロン兵らはてんでばらばらに逃げ始めた。だが、もう遅い。一度混乱に陥れば、後はこちらの物である。
「たたきのめせっっ!」
とバッツは目の前のバロン兵を一蹴しながら叫んだ。それに呼応するかの様に、闇夜を魔法が焦がす。ファイア。黒魔法の初歩である。本来の威力は低いがそれは、使用する者の魔力に左右される。鍛え抜かれた赤魔道騎士達なら、ファイアでも充分戦える。ある者は魔法の前に倒れ、またある者は切り伏せられ。そんな乱戦の模様を1人、冷静に把握している者が闇の中にいた。シャドウである。その名の通り、闇夜と同化している様である。
「戦いを始めたか・・・。」と溜息混じりに言う。
「お前の任務は偵察ではなかったのか・・・?」
静かに、バッツの方を見やった。
「仕方がない。」と言うと、シャドウは闇に乗じて一気に戦場に向かって駆けた。インターセプターも後を追う。