第5話 開戦準備
午前10時 ウォルス城 後半
赤い背服を着ている事から、彼はウォルス軍精鋭の、赤魔道騎士団の士官だと分かる。
士官は部屋に無造作に置かれていた木箱の上に立つと、
「傭兵の諸君!よく集まってくれた!我がウォルスの危機を救うため、500人もの猛者が集まった事を嬉しく思う。早速だが、君たち傭兵部隊の立場について簡単に説明しておく。君たちは我々正規軍の指揮には従って貰うが、独立した指揮系統も持ってもらう。君たちの任務は、前線で敵と戦うことのみ。だがこれは優秀な指揮がいて初めて全う出来る任務だ。君たちの中から優れた指揮官を選んでもらいたい。もしも指揮官が決まらなかったら、正規軍に編入して戦ってもらう事になる。」
士官が言い終えると、静かだった部屋が再び騒がしくなった。だが騒がしいだけで名乗りを上げる者など全くいなかった。それはそうだろう。ここに集まった者達は武術の心得はあっても、兵法の心得はない。
「お頭、どうですか?傭兵部隊の士官ってのは?」
タイクーン軍の船の乗組員が、ファリスに言った。
「おれは指揮よりも前線で戦ってる方が性に合ってるさ。」
ファリスは4人の中で最も兵法に長けている。だがそれは4人の中では、だ。なにより本人にその気がないのだから、無理にやらせる事もあるまい。木箱にたったまま、士官が困った様に言った。
「誰もいないのか??」
傭兵達はそれには答えない。元ソルジャーも、暗殺者も、興味もないと言わんばかりに知らん顔をしていた。そこに騒がしい一団を一括する様な野太い声が、部屋中にとどろいた。
「待たれよっ!」
ん?と言う顔で士官は振り返り、声のきこえた方に体を向けた。するとそこには侍の姿。
「拙者にぜひ、傭兵部隊の指揮を任せて頂きたい!」
この言葉にあたりが騒然となった。そこにどこからともなくこんな声が聞こえていた。
「兵法でも心得てるっていうのか??」
懐疑的な声が浴びせらせる。それに答えるかの様に男が言った。
「拙者は、2年前までかのドマの地でガストラ帝国と戦っていた!拙者の名は、カイエン・ガラモンドでござる!!」
その男−カイエンの言葉に辺りがいっそう騒然となった。
「カイエンって言ったら、ドマの有力武将じゃないか?!」
「生きていたのか?ドマ陥落の際に戦死したと聞いたが・・・。」
懐疑的な声はすぐに立ち消えになり、部屋の中はカイエンが指揮を執る様な雰囲気に変わっていった。指揮官が決まったところで、部隊の編成が行われた。ここから既にカイエンの指揮官としての手腕が発揮された。
「我々の利点は、少数精鋭と言うところにある。そのため、部隊は小規模な物をいくつか作り、電撃戦で敵に挑むのがよい、と踏んでいる。50人一組くらいで、十組作って頂きたい。」
一団はその言葉に納得した様にグループを作り始めた。一方バッツ達もグループを成形しつつあった。タイクーン軍30人に、彼ら4人。あとの16人ほどはファリスが目利きをして片っ端から引っこ抜いていった。ファリスは前々から気にかけていた人物に目を付けた。元ソルジャーと思われるあの若い男だ。声をかけにくい雰囲気を持っているが、ファリスはそんな事など気にもせず男に声をかけた。
「なあ?あんたまだどこのグループにに入ってないんだろ?俺たちの所に来てくれよ。」
「・・・悪いが、興味ないね。一人でいい。」
「あんた、人の話を聞いてたのかい・・?」
ファリスが眉をくいっと上げて言った。だが男はそんな事などどうでも良いと言わんばかりに冷静に反撃に出た。
「つたない連携など、組むだけ無駄だ。それに機動力を生かして戦うなら、なおのこと一人の方が良い。」
「お前はそんなに強いのか?」
初めてファリスの言葉に耳を貸したかと思うと、男は背の剣をスッと抜いた。バスタードソード。その重量で敵をたたききる剣だ。
「その身をもって試してみるか?」
「面白い。」
冷たくも、怒りを含んだ声でファリスが返した。彼女も、腰のダガーを抜いた。二刀流。片方を逆手に持ち、深く腰を沈める。一触即発の事態である。そこにバッツ、ファリス、ガラフの3人が止めにかかった。乗組員達も駆けつける。
「おいおい、よせよせ。仲間割れしてどうするんだよ?」と説き伏せるようにバッツ。
「お姉様も抑えて。ここでいざこざを起こしては、何にもならないわ。」
「・・・・・分かった。」
「すまなかった。ついカっとなって・・・。この通りだ。」
ファリスはレナに促され、深々と礼をし、男に謝った。ガラフも男をなだめる様言った。
「わしはガラフという者じゃが、さっきはファリスがすまんかったのう。」
「いや・・・。いい。俺にも非があった。すまなかった。」と、意外にも謝罪の声が聞かれた。
「もう一度聞くが、ワシらと一緒に戦ってくれんかのう?少なくとも、ワシらはおぬしの足手まといになる事はないと思うのじゃが?」
男は考え、答えた。
「分かった。あんた達の組に入れさせて貰う。」
「で、名前は?」
ガラフは男に名を聞いた。思えば目の前の男の名前を知らない。
「俺は、クラウド・ストライフ。元神羅カンパニーソルジャー1STだ。」
クラウドは自己紹介と共に、簡単に身分を紹介した。だが、ガラフは訳が分からないと言わんばかりに首をかしげていた。頭上には無数の疑問符。
「神羅?ソルジャー1ST??何の事じゃ??」
ガラフには記憶がない。そのため、普通の人が聞いて驚くことも、ガラフは驚かない。そのガラフにファリスが補足した。
「ソルジャーってのは、ガストラ帝国内に存在する神羅って会社に所属してる精鋭の事さ。ソルジャーだったら、英雄セフィロスを知ってるだろ?」
前半はガラフに、後半はクラウドに向けた言葉だ。
「なるほどのう。お前さんはソルジャーという仕事をしとったのか。」とガラフ。
「英雄セフィロスの事はよく知っている。ソルジャーでなくとも、誰もが一度はその名を聞いた事があるハズ・・・。」
次第にクラウドの顔が曇り、口調も重くなる。
「5年くらい前に任務中に事故って、死んだと聞いたがなぁ。」
ファリスが懐疑的な口調で言った。5年ほど前、英雄と呼ばれたソルジャーが任務中事故死したというニュースが流れた。英雄の名をセフィロスという。同じソルジャーだったクラウドが言ったとおり、セフィロスはソルジャー1STの中でも最強と謳われた。その名はガストラ帝国はもちろん、世界中に知れ渡っていた。その英雄の死亡と言うニュースは、神羅の報道により世界中に、瞬く間に広がった。ただこれには疑問を抱く人も少なくない。神羅の手により、英雄の死が知らされたからだ。
まず、帝国最強と言っても過言ではないソルジャー1ST、その中でも英雄と謳われた男が事故死という時点で怪しい物がある。次に、死体が見つかっていない事が疑問を招いていた。事故死というのは、神羅の情報操作ではないのか?と言う見方が多い。ただ情報操作だとすれば、それが何のためか、それは分からない。
クラウドが答える。
「実は、俺はセフィロスを捜しているんだ。」
「なぜかの?」
「ああ、あの・・・。」クラウドがファリスの名前を言おうとしたが、クラウドはファリスの名を知らない。
自己紹介していないことに気づいたファリスはハッとした顔で言った。
「ああっ!ごめんよ、自己紹介がまだだった!俺はファリス。よろしくな。これでも女さ。」
「ふうん・・。まあ、とにかくファリスが言った通り、セフィロスの死には余りにも不明瞭な点が多すぎる。だから俺はセフィロスを追っ手いるんだ。」
まだ他の目的があるが、あえてクラウドはふせておいた。
「へえ。それで、何か手がかりでもあるのかい?」
クラウドはその言葉に、再び顔を曇らせた。
「・・・何もないが、どうも気になって仕方ないんだ。」
その言葉にファリスは、何かをつかんだのか、更に追求した。
「それだけじゃなさそうな顔をしてるな。ワケアリだろ?」
なぜ分かった?を言う顔をしてクラウドは、ファリスを凝視した。
「まぁ、ワケまでは追求しないさ。人それぞれ他人には言えぬコトだってあるからな。」
「ああ・・・。」
幾らかの時間が経ち…。
「傭兵諸君っ!最初の任務が決まったぞっ!」
先程ほどの士官とは別の者が慌てて入室してきた。
「敵に攻勢の動きがある!今すぐカーウェンに行ってくれ。」
彼らの戦いはまだ始まってもいない。これからが正念場だ。
戦いの舞台はカーウェンに移る。
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