第5話 開戦準備

3月15日 午前9時   ウォルス首都軍港

「ここがウォルスかぁ。」

「人が多いのぉ・・・。」

バッツはガラフと共に甲板で、ウォルス首都の様子を見ていた。とにかく人が多い。これまでバッツはボコと共に霧の大陸に存在する全ての国を見て回った。

彼の故郷であるダムシアンは、貿易が非常に盛んだ。そのため人口は霧の大陸の中では多い。霧の大陸では、というのは他の大陸に存在するガストラ帝国や、エスタ共和国、バロン王国などのそれと比べたらはるかに少ないからだ。

それにしても、数え切れない程の人々がバッツの目に映っては消える。港で働く者や、商人、兵士、船乗り、港の管理者など。港だけでもこれだけの人間が出入りしている。バッツが港の様子に見入っているうちに、ファリスとレナは入港手続きをしていた。当然だが、どこの国にも出入りするには手続きが不可欠だ。しかし、現在は非常時である。加えてバッツらは援軍としてウォルスにやってきた。軍とはいっても30数人。これで戦況が変わるはずがないのだが、ウォルス側は温かくタイクーン軍を迎えた。既にバロン軍勢に二つの都市を占領され、その上別の敵に首都に近い都市を占領されているウォルスにとっては、外部からの支援は少しでも欲しかった。たとえ30数人でも、貴重な戦力なのだ。その上、危険を押しての来訪だ。ウォルス軍はこの上ない感謝の気持ちでタイクーン軍を迎えた。

入港してから40分が経とうとしたとき、代表として出向いていたファリスとレナが船に戻ってきた。

ファリスが言う。

「みんな、今からウォルス城に向かう。ウォルス王が俺たちと話をされたいそうだ。」

続けてレナが言う。

「荷物をまとめたら、ウォルス軍の人が駅まで案内してくれるそうよ。」

と言うと、レナも自分の荷物をまとめるべく、船室へと消えていった。バッツとガラフも一度自室に戻り、荷物の整理を始めた。


 一行は各々荷物をまとめ、ウォルス兵の案内によって駅に到着し、専用列車に乗り、ウォルス城にむけて出発した。ウォルスにとって彼らは大事な客人なので、専用列車を手配させ、彼らを王の待つウォルス城に招待した。専用列車というだけあって、外見だけでなく内装も立派だ。その上、4人に1部屋位の割合で客室を用意されている。

ところで列車は現代では一般的だが、タイクーンは国土が起伏に富んでおり、樹海とも言える森がうっそうとしているため、列車の運用には不向きという理由から列車は通っていない。だから、レナは列車に初めて乗る。彼女の首は車窓の方を向いて動かない。ファリスは父と共に同じ手段でウォルス城を訪れた事があるから、これと言った反応は示さない。バッツとガラフもファリスと同じく、動じる事はない。ちなみにボコは馬房ならぬチョコ房を備えてある客車に乗っている。

「見えたわ!あれがウォルス城ね!」

レナが言った。

「どれどれ・・・。」

バッツが車窓から外を眺めた。見るとそこには水と調和を果たした様な姿の城がたたずんでいた。バッツはウォルス城を見て、これから自分が戦いに身を投じる事を肌で感じ取っていた。

間もなくウォルス城に着く。

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