第1話 戦火 

午前10時11分 フィガロ城

  3000人ほどにもなる一団が、フィガロ城に到着したのは、戦闘が終わってから更に30分ほど後のことだった。

 「ここがフィガロ城・・・。」

 ギルバードは目の前にそびえ立つ城に驚いた。ダムシアン城とは全く違う構造。城を構成する近代的な材質。全体的に実戦的な作り。 フィガロとダムシアンは友好関係にあるが、ギルバードは1度もフィガロを訪れた事がないのだ。 だからフィガロ城を見るのも、入城するのも、今日が初めてだ。

 その驚き様にジェフリーは得意げに答えた。

 「そうです。そしてここがこれからの我々の活動の拠点となるのです。」

 「?」

 ギルバードはジェフリーの言葉の意味がよく分からなかった。しかし、意味深な言葉である事だけは理解出来た。 城では既にダムシアン兵らの受け入れ態勢が整っていたのだろう、城門をくぐると、城の兵士らがダムシアン兵らを兵舎へと 案内した。しかし、2人はジェフリーが別の場所へと案内する。

 城門から直進し、城の中央の建物へ。 ジェフリーは2人をエドガーの待つ王の間に連れて行ったのだ。フィガロ城はダムシアン城と比べて、配置されている兵士の数が随分多いが、王の間に近づくにつれてその数が多くなっていくのが よく分かる。

 王の間の前に3人は着いた。ここまで無言でギルバードとビリーを連れてきたジェフリーが口を開いた。 それはこれまでの物とは違い、静かで、厳格な物だった。

 「近い内に、我が王はあなた方の祖国を滅ぼした2つの国と戦うつもりです。誤った方向に進みつつある世界を救うために。 いままで我が王は、その時のために力を蓄えていたのです。 そして戦いが起こった時は、あなた方の力を我が王に貸して頂きたい のです。あなた方にはこの事を踏まえて我が王の話を聞いて欲しいのです。」

 「分かりました・・・。」

 「承知致しました。」

 ジェフリーの真剣な言葉に、ギルバードとビリーは頷き、答えた。 3人は、王の間に入る。扉から玉座まで続く、赤い豪華な絨毯の上を3人は歩き、エドガーの前に立った。 ジェフリーが一礼し、エドガーに報告を始めた。 

「陛下、ギルバード様と、ビリー殿をお連れしました。」

 「ご苦労だったな、ジェフリー。」

 エドガーは、満足げに言うと、ギルバードらに対して話を始めた。 しかしその前に、エドガーはギルバードらに深く詫びた。

 「まさか、隣国がガストラやバロンに攻撃され、占領されたとは知りませんでした。 そして、知らなかったとはいえ、帝国と同盟を結んでいるとはいえ、 窮地に立たされたダムシアンに対して軍を送れなかった事をお許しいただきたい。」

 エドガーは、言うと2人に深く詫び、深く頭を下げた。 ギルバードは驚き、頭を上げる様にと、エドガーに言う。

 「そんな・・・。あなたが謝ることではありません。帝国と同盟を結んでいながら、我々をかくまって下さるだけでも 充分なのです。それこそ、危険を顧みず僕たちをかくまって下さるあなたには大変感謝をしているのです。」

 ギルバードの言うことはもっともな事だった。 ガストラ帝国が敵と見なしている国の王子と軍の残党を、ガストラ帝国の同盟国がかくまうのだ。 フィガロ王国が戦火に巻き込まれるのは、誰にでも分かることだ。 しかし、エドガーはそんな事なぞ全く気にしていないらしい。そこには決意を固めた心があった。

 「確かに・・・フィガロは戦火に巻き込まれるでしょう。 しかしながら私は、この国を治める者として侵略を許すつもりはありません。 盟友であるダムシアンを滅ぼし、不平等な同盟関係を一方的に構築し、他国に侵略しその国の人々から富を取り立て、 世界中に戦火をもたらす帝国の横暴を、いや、下等な思い上がりを潰さねばならないのです。」

 エドガー以外の、王の間にいた者全員が驚いた。 我が王はついにガストラに反旗を翻られるおつもりか・・・。同盟国の長がここまで言うとは・・・。 何という覚悟か・・・。来るときが来たか・・・。場所が場所なら、エドガーの首は胴から離れていても全く不思議ではない話の内容に、ギルバードとビリーは 王の間にいる誰よりも、驚き、心に感銘を覚えた。

 そして・・・。

 「その時は是非、僕たちにも戦わせて下さい。微力ながらお手伝いをさせて頂きます。」

 ギルバードも、エドガーの決意に答える様に言った。

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