第3話 集結

タイクーン 風の神殿最上階 クリスタルの間 後半 

 見るとそこには、1人の若者が立っていた。腰まで伸びた紫色の美しい髪。強い意志を感じさせる瞳。整った顔立ち。胸部を見て、バッツとガラフは目の前に立っているのは女性であることに気づく。

「姉さん!!」

「だめじゃないか、城を抜け出しちゃ。みんな心配したんだからな。」

「ごめんなさい・・・。とてもお父様の事が気になって、城を飛び出してしまったの・・・。」

「なんだ、それなら俺に言ってくれれば一緒にここまで来たのに・・・。今度からは抜け駆けナシだ。約束だぞ??」

「うん。」

「あ、あの〜。」

「もしかして、あんたがレナを助けてくれたのか?感謝するよ。」

「は、はぁ・・・。」

「申し遅れた。俺はサリサ・シェルヴィッツ・タイクーン。でも、まぁサリサって名はあんまり使わないな。みんなからはよくファリスって呼ばれてるから、そっちの名で呼んで貰った方が嬉しいかな??あ、言葉遣いは男だが、一応女だからな。兄じゃなくて姉だからな。」

「は、はぁ・・・。」

バッツは、自分の抱く王族のイメージとは遠くかけ離れた目の前の王族のペースにただただ飲み込まれるだけだった。

「で、お名前は??」

ファリスがバッツに問う。慌ててバッツは反応した。

「あ、俺はバッツ・クラウザーです。え、・・・旅人です。チョコボのボコと一緒に旅をしています。以上です。」

「よろしく。」

握手を求められ、これにもやや慌てて返す。バッツは女性と接した事があまりない。

「お名前は??」

「ワシはガラフじゃ。記憶喪失で、名前も完全に思い出せんのじゃよ。他の記憶は、み〜んな・・・・・・・・・・パーじゃ!」

ガラフは閉じた右手を頭に当て、パッと広げた。

「ほぅ・・・。」

ファリスはレナの方を見やった。

「レナ・・・。すっごく個性に富むメンバーだなぁ。」

それはファリスの心からの声だった。


一行は砕けた風のクリスタルを集め、神殿1階の小部屋でここで起きた事を話した。

「それにしても、レナは無事で良かったけど、オヤジは行方不明だし、クリスタルは砕けた。一体ここで何があったていうんだ・・?世の中どうなってるんだ?」

ファリスの言葉に、レナが答えた。

「お父様は、台座の上に現れてこう言ったわ。クリスタルを暗黒魔道士から守れ、と・・・。クリスタルを砕いたのも、その暗黒魔道士らしい。」

「クリスタルを守れ、か・・・・。」

「タイクーン王は、クリスタルが力を貸してくれるっと言ってましたけど、どうやったらクリスタルが力を貸してくれるのか・・。」

バッツから、ファリスに向けての言葉だ。

「あ、そんなしっかりした言葉遣いしなくても良いよ?堅苦しいし、俺だけ偉そうな感じがするからな。」

「は、はい。」

(とにかく驚かされるな・・・。まぁ、その方が話しやすいけど。)

自分たちは主従関係にないのだからお互い同じ言葉遣いでいこう、というのがファリスの考えらしい。ここで、ガラフが意見を述べた。

「タイクーン王の話によると、クリスタルはワシらに力を貸してくれるハズ。なばらそれを試してみぬか??」

その言葉に、ファリスが首をかしげていった。

「試すって、どうやって??」

「ウム、もしもクリスタルに何らかの力がありながら、それがワシらの意のままに呼び起こす事が出来ないのならその機会を作ればよいじゃろう。ワシらの身が危険にさらされれば、クリスタルの力が目覚めるかもしれん。」

「危険ね。」とレナ。

しかしファリスは、ガラフの意見には肯定的だった。

「クリスタルに関わった以上、いずれは、暗黒魔道士と戦う事になるだろう。それくらいの危険は覚悟の上でかからないとな。俺はガラフに賛成だな。」

ファリスは全面的にガラフの意見に賛成の意を示した。

「で、その機会とは具体的にどんなことだ??」

「戦場で戦うのはどうじゃ??」

「戦場ッ!!?」

3人はガラフの言葉に驚愕した。しかし、当の本人は平然とした口調でさらに続けた。

「どこでもいい。軍隊に傭兵としてでも入隊して、危険に身をさらす。そうすれば、クリスタルの力が目覚めるかもしれぬし、その中で戦えばワシら自身の力も上がる。わしら4人がチョイと危険を覚悟して戦えば、良い事づくしではないか?」

「確かに、言われてみればそうね。」

レナが言った。どうやら覚悟を固めたらしい。

「で、いつどこに向けて出発するんだ??」とファリス。

「ぬぅ、それがのう・・。ワシは記憶喪失じゃ・・・。何がどうなっとるのか全く分からん。行き先はお主らで決めてくれ。」

「なら、行き先は決まりな。」

ファリスがニヤリと笑って言った。

「どこに行くの??」

「実は、レナが城を出た後、ウォルスが攻撃されているという情報を掴んでね。バロンが動いているらしい。」

ウォルス。それはタイクーンの数少ない友好国である。水のクリスタルを有し、精強な軍隊を持つ世界屈指の大国である。だから、いかにバロン軍が攻撃してもウォルスはそう簡単には潰せない。いや、「潰せないハズだった」が正しい表現であろう。なぜならば今現在ウォルスの一都市がガストラ・ガルバディア軍によって占領されているからだ。その都市はドールと言い、ドールは首都ウォルス、王城、そしてクリスタルが安置されているウォルスの塔と非常に近い。その上、ガストラ・ガルバディア同盟軍は5万人という大部隊をドールに配置している。これが首都などに攻勢にでた時、迅速に対応するためウォルス軍は敵と同様、ドール周辺に5万人以上の兵力を配置していた。加えて5万人とは別に、予備兵力も配置している。約10万人がウォルス陸軍の全戦力だから、ドール周辺に配置されているウォルス陸軍は、その全戦力の半分以上である。だからウォルス軍はバロン軍に対して平時の半分以下の戦力で立ち向かわなければならない。

ウォルスがそう簡単に倒れるとは思えない。しかし、バロンは油断のならない相手だ。
 もしかすると・・・と言う事もない事はない。もしも、ウォルス軍が敗れると、首都を中心にバロン軍とガストラ・ガルバディア同盟軍がクリスタルを巡って血で血を洗う戦いを繰り広げるに違いない。どちらの側が勝ったとしても、水のクリスタルは奪われ、ウォルスの地は全土が戦火にさらされるだろう。

友好国が危機にさらされているこの状況は、見過ごせるハズがなかった。その上レナは人一倍正義感が強い。それを聞きレナは、すぐさま反応を示した。

「じゃ、じゃぁすぐにでも行きましょう!!ウォルスと水のクリスタルを守らないと・・・・。」

レナに諭す様にファリスは言った。

「まあ待てよ。まずは城に戻って、準備を整えよう。レナがここまで来たのとはワケが違うんだから。」

「え、ええ・・。」

その言葉にレナは、申し訳ない様に頷いた。

「じゃあみんな、タイクーン城に行こう!」

「あの、俺たちは・・?」

バッツがガラフと自分の事を指して言った。同行して良いのか?と言う意味である。それにはレナが答えた。

「あなた達はお客様として丁重におもてなしして差し上げるわ。いいでしょ?」

レナはファリスに同意を求めた。

「ああ、俺からも入城を歓迎させて貰おう。」

「じゃあ、クリスタルはどうする??」とバッツ。

「これから身につけて行動するのはどうかしら?」レナが提案した。

「まあ、砕けてしまったクリスタルの事は城に帰ってから考えよう。まずは城に戻る事が先決さ。」

一行はウォルス出発の準備を整えるため、風の神殿を後にした。

戻る