午前10時21分 プラボカ
「うおお!」
「敵を蹴散らせ!」
「奴らを倒すぞ!!武器を取れ!」
「俺たちが黙ってばかりいると思うな!」
大通りで、港で、工場街で、町の至る所で、住民の一斉蜂起が起こったのだ。プラボカの住民の、大半が思い思いの武器を持ち、更に幽閉されていたり、町に潜伏していたウォルス軍将校が、立ち上がった。場所は違えど、時を同じくして。そう、敵が複数の反乱を同時に対処出来ぬと踏んで、場所を分散させて反乱を起こしたのだ。しかも、時を同じくしての蜂起だから、バロン・カルナック連合軍にとっては、一度に敵の数が倍以上になったも同然だ。セシルが、カインが司令部に着いたその時、反乱は起こったのだ。シャドウの手引きによって。
同時刻 バロン・カルナック連合軍 司令部
「第14、15小隊全滅!!」
「港湾部第1区間占拠されました!!」
「第2、第3兵舎が攻撃を受けています!占拠は時間の問題です!」
「第3部隊突破されました!南地区に敵が侵入!」
「しまった・・・。」
セシルは満身創痍の状態で、そう口にした。しかし、次の瞬間には既に激しく思考を巡らしていた。そして支持を下す。
「第3部隊は、残存兵力を集結させつつ後退!各哨戒部隊は、南地区に結集し、これを支援!第2、第3兵舎は爆破放棄!守備隊は港湾部へ!!」
カインも、激戦を続ける主要部隊に指示を出す。
「第4部隊は現状を維持!アーバインにそう伝えろ!第2部隊はどれぐらいの兵が生き残っているか?」
「はっ!約3900人が生き残っております!」
「よし・・・。第1部隊の生き残り、それと各部隊の落伍者は、第2部隊を核に、障壁状に展開!」
カインは、当初の作戦通り、幾つもの部隊を通路に展開させ、敵の突破を防ぐつもりなのだ。2人の采配はそれは非常に優れていて、迅速だ。が、事態は恐るべき速さで進行している。
早くも反乱軍の手に落ちた港に、シャドウはいた。彼はこの町に忍び込み、反乱を企てている集団と接触し、計画と準備を進めていたのだ。ウォルス軍の進撃スケジュールを流し、計画的かつ効果的な反乱を引き起こしたのだ。そのシャドウは、今は計画指導者としてではなく、本業の暗殺者としての腕を振るっている。番犬たるインターセプターと共に、必至に抵抗を試みる敵を、次々と倒す。猛威を振るう、反乱軍と戦う、連合軍の考えはこうだ。
狭い通路が幾つもある、倉庫街に撤退し、勢いよく大多数で追撃する敵を誘い込み、少しずつ削ろうというものだ。これを至る所で少なくとも、兵舎守備隊が到着するまで続けるのだ。これは効果的だった。反乱軍の大多数が民間人だ。だから、この様な罠に簡単にかかってしまう。少数の町の自警団や将校らはこれを止めるがしかし、その言葉に果たして何人が耳を貸したろうか?おかげで、少なからず連合軍は反乱軍の数を減す事に成功したがしかし、その膨大な数は、瞬く間に連合軍を疲弊させた。更に、駆けつけた将校が乱戦に加わり、連合兵は数を次第に減らしてゆく。更にシャドウを筆頭に手練の兵士らが敵を駆逐する。
「うあっ!」
「くっ・・・!」
(フン・・・。)
シャドウは敵陣に疾走するかと思うと、疾風の如き速さで敵を小太刀で斬り捨ててゆく。更に・・・。
「立ち止まるな!1人も逃がすな!!」
「ここから消えろ!」
自警団員、兵士、更に武術の心得のある者達は、それぞれの武器で少数の敵に群がる様に戦う。群狼の様だ。剣、槍、斧、短剣、銃。中には鎖鎌やハンマー、鉄球と言った変わった武器を使う者や角材や鉄パイプを振るう者、タルや手頃な石を投げつける者までいた。老若男女、誰もが武器を持ち、戦っているのだ。連合軍が圧倒的劣勢な状況に立たされるのも、必然といえる。その頃、乱戦模様のプラボカの港に、奇襲しようとする艦隊があった・・・。
午前10時47分 プラボカ近海 フィガロ海軍旗艦 重巡洋艦「プリンツ・オイゲン」
広大な海原に十数隻の艦艇から成るフィガロ艦隊。その旗艦たる、重巡洋艦「プリンツ・オイゲン」艦橋では装備を固めた、いかつい体格の騎士が、艦橋から見えるプラボカの港を凝視していた。そう、彼こそはフィガロ軍将軍、ジェフリー・マクラウドその人だ。
「司令、間もなくプラボカ港が我が艦隊の有効射程圏内に入ります。」
「うむ!」
力強く返事をするとジェフリーは、艦隊に命令を下す。
「全艦、機関全力稼働!ならびに、主砲一斉掃射用意!目標、敵艦隊!!ただし、別命あるまで砲撃を禁ず!」
「ハッ!全艦機関全力稼働!砲撃手、一斉掃射用意!ただし、別命あるまで砲撃は禁ず!」
副官が通信機を通して艦隊に伝達する。そして、フィガロ艦隊が遂に、港の敵艦隊を射程に定めた。
「主砲、撃てえ!!」
旗艦をはじめ、兵員輸送船を除く全ての艦艇が主砲を放った。黒く、長大な砲弾の雨が轟音と共にプラボカの青い海と空をなめる様に進む。刹那、砲撃は敵艦隊に直撃。爆音と火柱が立つ。フィガロ軍はそれを合図にしたかの様に、戦いの渦中へとその身を投じようをしていた・・・。