「どくんだ!」

「死にたくなくば道をあけよ!」

バロン陸兵団の精鋭のみを集めたハズのアーバイン隊は、赤魔道騎士団に大変苦戦を強いられていた。技量と装備が原因だろうが、やはり士気によるものが一番大きい。これまでバロン軍は守勢を取らざるを得なかったし、守勢の姿勢を崩さなかった。これをウォルス軍は今、ただひたすらに攻めている。守勢と攻勢。どちらの士気が高いか、と言われれば攻勢に出ている方に決まっている。アーバインの周囲の兵はほとんど騎士達の目覚ましい戦いぶりの前に倒れそして、アーバインは・・・。

「剣客将軍、アーバイン!貴様のその首、我らがいただくっ!!」

「年貢の収め時だ!ゆくぞっ!」

アーバインは厳格な面持ちで抜刀術の構えを取る。2人の騎士とすれ違う瞬間・・・・。

「うおっ!」

「がっ・・・・!」

すれ違う刹那に抜刀された刀は、2人の体を裂いていた。居合い抜き。アーバインが得意とする技だ。

「フ、意気込みは良し・・・。しかし相手がヒヨッ子ではな。」

ヒヨッ子というものの、先に倒れた2人は赤魔道騎士団の中でもずば抜けた技量を持つ者達だ。それを一撃で倒し、ヒヨッ子と言い切るアーバインの技量は、畏怖すべき物だろう。
しかし・・・。

「しかしここで立ち止まりはせんっ!!」

「泣き寝入りは御免だ!」

「こいつで吹き飛べよっ!」

何人もの騎士が魔法を一斉に放ち、着弾したかと思えば、突進するかの如くアーバインに迫る。よく見ると突進する騎士の剣が炎に包まれている。魔法剣だ。それは剣と魔法を極めねば、身につける事は出来ない。そして何より先天的要素、つまりは才能が物を言う。そう、魔法剣を使う者こそ、天賦の才に恵まれた万能の剣士なのだ。黒魔法ファイアで剣を覆い、アーバインに斬りかかる。

魔法の一斉掃射に耐え抜いたアーバイン。迫る騎士にほえた。

「よい攻めだ!しかし私はまだ死なん!」

刹那菊一文字にも異変が生じた。刀身が蒼穹となり残像と衝撃波が生まれ、それが先頭をゆく3人の騎士を瞬時に引き裂いたのだ。カイゼルブレイド。それが蒼穹の、衝撃の名だ。

「おのれぇ!」

怒りにまかせ、サンダラを放つ騎士。中級魔法の1つだ。

「その様な物でっ!」

アーバインは横薙一回でサンダラを相殺し、一心不乱に突撃する。

「な、なに!ぅ!」

更なる横薙が騎士を倒す。まだ迫る来る敵を、斬る。斬る。斬る・・・。

「ここまで来て、たかが雑兵どもにっ・・・・!」

目に映る敵を、斬っては更に斬りそして、執拗に放たれる魔法を刀で跳ね返し、放った側のハズの人間を倒してゆく。魔法を跳ね返すなど、普通は出来ない。普通は、だ。これをするにはイメージコントロールと、ある程度の魔法の心得がいる。例えば暗黒騎士は暗黒の力を宿したところで、それを外部に放出できねば、暗黒剣技は使えない。この時、イメージコントロールで力を開花させるのだ。

セシルやカイン、それにクラウドやカイエンはそれが巧みだし、それを持続させる集中力も並大抵ではない。アーバインも、その内の1人だ。居合い抜きは純粋な剣技だが、身に付けた集中力で精度が増しているし、先のカイゼルブレイドといった剣技や、魔法を跳ね返すと言った芸当は、それこそイメージコントロールと集中力なくしては成り立たない。加えて剣技を極め、我流にまで昇華させねばこれ程の技は編み出せぬ。

しかし、それ程の力を持つ、いわば一騎当千のアーバインが奮闘したところで、戦況が一変するワケではない。しょせん、1人だ。組織同士がぶつかり合う戦では質より量が物を言う。戦況は悪くもないが良くもない。ほんの些細な事で戦況が一変しうる事態なのだ。

まだ鷲づかみに出来る程いるウォルス兵に斬りかかるアーバイン。その余りにも強すぎる闘志とそれが反映された形相にウォルス兵らは、凍り付く。すくんだ一団に斬り込もうとしたその時・・・。

「!」

横合いから刀が伸びる。これにアーバインの菊一文字が激突し、火花をひらす。颯爽(さっそう)と彼の眼前に現れたのはカイエンであった。劣勢に立たされている第4師団の増援として、数十人の兵と共にはせ参じたのだ。言葉を交わさずとも分かる。互いの力量を。どれほどの修羅場をくぐり抜けてきたかを。そして・・・。


「同じく刀を使うか・・・!」

妖刀と名刀のぶつかりあいだった。幾多の残像を生みながら、斬り込む風斬りの刃。剛胆に風を薙ぎ、先の読めぬ動きをする菊一文字。言葉など要らない。ただ戦えば、敵の技量が手に取る様に分かる。

(ここは剣技を・・!)

「くらえ!」

「むっ!?」

菊一文字が青い光を帯び、刀身が震えながら波を描く。カイゼルブレイドを放った。カイエンも、必殺剣・虎でこれに応じる。

技が持ち合わせている威力に加えて風斬りの刃の力が加わる。風が槍の先端の様に尖り伸び、青い波動とぶつかり合い、相殺される。互いに一歩も退かない。2人の死闘に応じて周りの戦いも激化し始めた。まだまだ戦いは続くのであった。