第12話 援軍
3月18日 午前9時30分 プラボカ 第一兵舎
その、かつてのウォルスの闇の部分をため込んだ迷宮をセシルは行く。
「ここで何をしていたんだ・・・?」
セシルは剣を抜いたまま、用心深く歩を進める。それは一流の戦士としての心構えからか、それとも自らの心の、ゴルベーザに対する不信感からか・・・?セシルは先程から聞こえる奇妙な物音の源を捜していた。
ゴルベーザがいるかも知れない。耳を澄まし周囲に注意し、進む。暗い地下牢の奧を目指し、ただ進んだ。その先を目指すほど、音が大きくなっている。
「これは・・・?」
一際大きい鉄の扉がセシルの前に姿を現す。耳を扉に当てると、確かに物音とそして、下劣な笑い声が聞こえた。
(ゴルベーザ?・・・違うな。)
向こうから聞こえてくるのは、か細く、ひしゃげた、しわがれた様な声だ。ゴルベーザではない。
セシルは再び剣に暗黒闘志を収束させ、一撃で叩ききり、更に扉を蹴倒し入る。
「むっ?!誰だお前は!」
そこには血まみれの白衣をまとって、充血した目をとがらせ光らせる、男の姿があった。
「ここで・・・、ここで何をしている!」
セシルは部屋を見渡し、怒りを通り越し殺意を抱いて詰問した。これまで捜していた兵士達が、その部屋にいた。が、人の形をしていなかった。それでもセシルが、部屋にいたのが失踪した兵士と分かったのは、身につけていた装備品が、バロン兵のそれだからだ。それにしても何だ、この惨状は?
目の前の男の人間性を、存在を、この部屋そのものの存在を疑いたくなる。無惨に解体された死体や、異形に変えられた兵士。そこに平然として立っている男。その姿、言動からかいま見る事が出来る異常さ。死の天使とでもいうべきか?
「お前は誰だ?!」
「フフフ、私はゴルベーザ様の配下にして天才科学者、ルゲイエじゃ!」
「ゴルベーザの手先か・・・。負傷兵をこんな風に変えたのも、お前か!?」
セシルの言葉にルゲイエは何がおかしいのか、ケタケタと笑いながら答える。
「何を言うか。死んだ兵士を蘇らせ、その上私は彼らに新たな力を授けたのだ。むしろ感謝の1つもして欲しいものだ。」
「お前は自分が何をしたのか分かっているのか?これは・・・。」
セシルの言葉はルゲイエに遮られた。
「これはこの上ない偉業なのだ!ゴルベーザ様の元で有能な兵士をつくりあげ、全世界を我が手中に・・・!ヒッヒッヒ、これ程素晴らしい事が他にあろうかっ??!」
そう語るルゲイエの目には、一点の曇りもない。自らの行為が絶対善と信じているとでも言うのか?