「これを防げたら、まさに奇跡だな!」
カイン率いる竜騎士団は、突破してきたウォルス軍相手に激闘していた。この戦いに参加した竜騎士は800人。しかし、精鋭であるが故、常に最前線で戦い欠員を生じてきた。だから今や残りの竜騎士は600人前後にまでなっていた。しかし、たった600人で迫り来る敵と戦っているワケではない。3000人ほどの陸兵団と共に、である。
「そこをどけぇ!」
怒号と共に一撃。敵の最前列の兵士に直撃。続く竜騎士。乱戦だというのに、槍を見事に扱って、味方を傷つけることなく敵のみを倒す。技量の高さを感じさせる。だが、相手が傭兵部隊と赤魔道騎士団を含む部隊である事を忘れてはならない。もちろんカインもそれを忘れていない。それに属する者達と、つけねばならない決着があるのだから。
「やつらはどこだ?!」
やつら。それはクラウド、そしてバッツの事だ。元ソルジャー1STのクラウド、そして一傭兵にもかかわらず、果敢に挑んできたバッツ。技量で言えばバッツも侮りがたいものの、クラウドが数段上だ。しかし、防戦一方ではあったものの、攻撃をかわし続けたバッツの潜在能力も、クラウドと同等か、それ以上かも知れない。ミスリルランスで周囲の敵を一掃し、高くジャンプ。そして何と、家の屋根に着地した。これ位楽なものだ。バロン竜騎士団団長なら乱戦の中、家や城壁を飛び越えるくらいの力で、やっと合格点なのだ。カインは竜の様な鋭い眼光で、敵陣を照らす。
「いた!」
最前列で、大剣を振るい、竜騎士を、陸兵を平気で血祭りに上げる男の姿。金髪の独特の髪型で、黒や紫を基調とした服。大剣と腕輪にはめられたマテリア。間違いなく、クラウドだった。が、奇襲をかけるつもりはない。正々堂々と、戦いたいのだ。連合軍全体が、背水の陣に立たされている事をしばし忘れカインは、指揮官としてではなく、1人の騎士として敵に挑む。屋根から飛び降り、無理なく無駄なく着地。クラウドの前に突如現れた。
「!・・・お前か・・・・・。」
「フッ、相変わらず冷静沈着だな。」
クラウドと、カインが対峙した。不思議と周りに、他の兵はいなかった。
「俺がなぜ、こうしてお前の前に姿を現したか、分かるだろ?クラウド。」
「この前の続き、か・・・。」
「その通り。」
バスタードソードを握り直すクラウド。ミスリルランスを構えるカイン。
「今日こそ、決着を付けるぞ!」
「・・・来い!」
猛然と襲いかかるカイン。
「はっ!」
回転を加え、激しくミスリルランスを叩きつける。分厚いバスタードソードがそれを防ぎ裁き、上から下へ、一撃。カインは右に避け、更なる一撃も避け、間合いを取る。
「くらえ!」
「!」
ストックブレイクか?違う。ミスリルランスが幾つもの残像をうみ、それがクラウドに突きを見舞う。手足。胸。首。頭。残像は、カインの精神力を得て、実際の槍にも劣らない破壊力を秘めていた。竜剣。それが残像による猛烈な突きの正体だ。ひたすらクラウドを狙う竜剣。遂に一撃がクラウドをとらえた。左の肩当てが無惨に砕かれた。が、傷はない。続く一進一退の攻防。これを突き崩すカイン。
「もらった!」
「っ!」
クラウドの眼前に迫るカイン。しかし、ここが元ソルジャー1STの腕の見せ所。竜騎士の名に相応しい強力な突きを、バスタードソードを横にねかし、槍をすべらせ攻撃をかわし、自身は右に転がる。
「・・・逃れたか!」
「いけっ!」
逃れたクラウドは、バスタードソードに、はめられた緑色のマテリアを発動させる。瞬く間に火球が生まれ、カインに迫る。ファイアだ。カインはミスリルランスを横に持ち、ファイアの軌道をそらす。ファイアは民家の屋根に直撃した。
「やるな、さすがだ・・・!」
クラウドが感嘆する。
「フッ、お互いこの程度では死ねんな!」
カインもクラウドの技量を心から認める。しかし、2人の戦いは突如中断せざるを得なくなる。それは2人の意思によって、ではない。それは連合軍の銃兵隊によってだった。鈍く、不気味に光る銃口。指揮官の命により、銃撃が始まる寸前。クラウドは伏せ、カインは跳ねる。銃撃の直後、クラウドの背後に湧き上がる悲鳴。多数のウォルス兵らが地に伏せ、二度と立つことはなかった。一瞬閑散とした大通りも、すぐさま別の兵士達が埋め尽くし、同時に誤射をおそれて銃撃もやむ。クラウドは立ち上がりそして、カインも体勢を立て直す。再び両者がぶつかり合う。やはり、お互い一歩も退かない。
「いつまでもお前と戦っていたいが、俺も多忙の身でな・・・!」
「!」
「奔れ、衝撃波ッッッ!」
クラウドは戦慄を覚える。そしてカインは勝利を確信する。全精神力をこの一撃に注ぎ込む、まさしく一撃必殺の技。カインが鍛錬の末に見いだし、編み出した技だ。至近距離ではかわせない。そう悟ったクラウドはマテリアを発動させる。
「エアロっ!」
今度は腕輪のマテリアが光り、カイエンの引き起こすかまいたちの様な風が生まれる。道を砕き、奔る衝撃波。音の如き速さで迫るエアロ。互いの技がすれ違い、互いに威力を減殺されながら、互いの標的めがけて直進する。全身を衝撃波にうがたれるクラウド。右の脇腹に深く切り傷を負うカイン。
「つぅ・・・!」
「くっ・・・!」
苦痛な表情と苦渋に満ちた声。クラウドはバスタードソードを支えに立ち上がり、カインは傷口を押さえながらも、直立する。全身をうがたれたクラウドの方が、ややダメージが大きい様だ。激痛に顔をゆがめながらも、カインは言葉を発する。
「往生際の悪いヤツだが、ここまでだなっ・・・!!」
「・・・。」
再び両手で槍を構え、ひと突きで仕留めようと迫るカイン。剣を構えようとするクラウド。しかし、全身に決して浅からぬ傷を負ったクラウドに、バスタードソードは重すぎた。避ける事も出来ない。
「待てっ!」
怒号と共にカインに立ちはだかる人影。突きを剣で受け止め、両者の間に割ってはいる。
「バッツ・・・!」
「前の借りは返すぜ!」
「・・・さかしいマネをっ・・!」
バッツが現れたのだ。傷を負ったカインに、万全の状態のバッツ。一見バッツに分がある様だが、技量の差は埋めがたい。バッツはそれを承知している。だから猛攻を加え、カインをクラウドから引き離し、なおも攻撃し続ける。
「はっ!」
「なんのっ・・・!」
バッツの突きをカインが槍の柄で受け止め、更に繰り出されるよこなぎを、今度は槍を縦にして受け止める。
「このくらいで!」
カインは竜剣を放つ。
「くっ!」
必死で剣を操り、竜剣を防ぐバッツ。が、左頬にかすめた。うっすらと線がはしり、血が出る。
(なんて強さなんだ・・・。)
改めてカインの強さに認識したがらもバッツは、必死で反撃に糸口を見いだそうとしていた。
(あの突きをかわせば!)
ひらめくや、全速力でカインに迫る。
「良い度胸だっ!!」
カインは立ち止まり、精神力を槍の先に、槍全体にまとわせる。ストックブレイクだ。
「くらえ!」
「これでどうだっ?!」
龍の牙が虚無を切り裂く。が、そこに敵たるバッツはいない。バッツはストックブレイクをかわし、カインの懐に入り込んだのだ。アイアンソードの刃のない部分、すなわち腹で、一撃をたたき込む。右の脇腹に直撃し、鮮血が吹き出る。竜騎士の象徴たる、蒼穹の鎧が深紅に染まる。道には血だまりができ、カインは槍を支えに立っているのがやっとの状態だ。
「ガハッ!」
口からも出血。バッツは立ち上がり、アイアンソードを握る。
「悪いが、ここで・・・!」
「こんな所で朽ち果てなどしないっっっ!」
どこにこれ程の力が残っていたのか?怒号をあげ、立ち上がり、凄まじい勢いでよこなぎを放つと、退き、捨てぜりふとも言うべき言葉を放った。
「バッツ!俺にこのような深手を負わせたのはお前が初めてだ・・・!」
「逃げるのか?!」
「今し方言った様に、ここで朽ち果てるワケにはいかんのでな・・・。また会おう!」
カインは飛び去りそしてバッツは、クラウドの元に駆け寄る。
「大丈夫か?」
かすかにかすれた声で答えが戻る。
「ああ、心配ない。すまないが、ポーションを・・・。」
「分かった。」
ポケットから取り出されたポーションをクラウドは飲み干した。これである程度の傷は癒えよう。
「ありがとう。もう大丈夫だ。それにしてもバッツ、腕を上げたな。」
「自分じゃ分からないさ・・・。それに必死に戦っていたからな・・・一層実感が湧かない。」
そこに後発組とも言うべきレナ達が合流した。
「2人とも、大丈夫?」
「何やら派手にやらかしたようだのう。」
「やっと追いついたな。」
バッツが先行しすぎて、3人は取り残される形となったのだ。
「状況はどうなってるんだろう?」
「こちらがやや優勢ってとこだ。いまだねばり強く抵抗してる。」
ファリスが答える。確かに敵陣奥深くに攻め入る事が出来たのは、バッツ達第1部隊だけだ。他はやや優勢という現状から少しずつ前進しているか、敵の猛反撃に立ち止まらざるを得ない状況だ。今分かっている事は、まだこの戦いが続くという事だ。