一方地下牢では・・・。
 
郊外に、忘れ去られた様に建っている第一兵舎。プラボカに5つある兵舎で最も古い。そのため今では立ち退きされ、軍が管理してはいたが、全く整備されておらず、荒れ放題だ。が、軍の施設だけあって頑丈だ。機密性を持たすためか、中の様子は外からでは全く分からない。その地下深くに作られた地下牢。その一室に、1人の科学者らしき男があった。

「ヒッヒッヒ、今、今イイようにしてやるからのぅ・・・。」

不気味な笑い声と、禍々しい言葉。科学者の言葉だった。元々は拷問用だった革のベルトを付けた台座にヒトをねかせ、メスや薬品片手に実験を。この被験者こそ、行方不明になったバロン兵だった。見れば部屋中このような地獄の様な光景が広がっている。

劇薬に、臓器の薬品漬け、血塗れた道具、実験体のホルマリン漬け、奇妙な形をした機械、パーツの様に分解された人体、棚にねかされている被験者、黒塗りの十字架にはり付けられた被験者・・・・。不気味な部屋だ。が、そこにいる科学者も部屋に負けず劣らず不気味だ。背が小さく、ひどく痩せて手にはシミと青く浮き出た血管、肌は蒼白を通り過ぎ、青いといってよく、白髪白ヒゲに突き出たほお骨が痛々しい。羽織る白衣は血と肉にまみれ、ポケットには注射器や薬品が無造作に、入っていると言うより突っ込まれていた。

既に死んだ被写体に薬と人工臓器、そして偽物の命、すなわち機械の心臓を入れ、縫合を開始する。が、これを縫合と呼んでよいのだろうか?ホチキスの針の様な物を刺したり、焼いて塞いでいるのだ。規則性のなさでは、はっきり言って幼児のおままごとにも劣る。縫合が済んだと思えば、今度は電気イスに座らせ、頭、首、両腕、背骨に次々とケーブルを刺しこんでゆく。無造作の一言に尽きよう。

「イッヒッヒ、これで電気を流せば・・・・。」

そこに扉が開く。漆黒の鎧に身につけた、暗黒騎士だった。ゴルベーザである。

「ゴルベーザ様!」

「ルゲイエ、実験の方はどうか?」

ルゲイエと呼ばれた科学者は自慢げに答える。

「はっ!全く新しい兵士の完成です。その瞬間をご覧下さい。」

「うむ・・・。」

「それでは・・・。」

ルゲイエはレバーを下ろし、被験者に膨大な電気を流す。それと同時に死んでいたはずの被験者が息を吹き返す。おぞましい、奇怪な呻きをあげ、暴れる。刺されたケーブルから流れる電気は、各人工臓器を起動させる物なのだ。そして脳の、知能、理性を司る部分に新しく埋め込まれた機械は、被写体を命令によってのみ動く。生きた兵器とするためだった。悪魔の意志の断片が、膨大な怒りの雷により呼び起こされたのだ。悪魔の召喚だった。知能、理性共にひとかけらもない様な姿だった。そしてヒトの形をしていない。異形そのものだ。一応ヒト形だが、縫合の痕と、生前の傷が異形さを強調させた。筋肉は優に二回りは大きくなり、各部に刺されたケーブルは許容量を遙かに上回る電気に流れた事によって焼き切られ、基部のみが体に食い込んだままだ。骨に、神経にケーブルを刺し、膨大な電気により一体化した。腰に刺された一際太いケーブルは、焼き切れず残っており、まるで悪魔のしっぽの様だ。

「ほう、これが新しい兵士か。」

ゴルベーザが言った。これに我が事の様にルゲイエが語り出す。

「はっ、脳に新機能を与え人間性を消し、我々の命令によってのみ動く、最強の兵士です!」

「うむ。明日にでもウォルス軍がこの町に攻め入る。実戦で力を試すが良い。それと、なるべくはやく撤収しておけ。いつまでもここにいる訳にはいかないからな。」

「はっ!」

「失礼します。」

実験室に2人の男が入ってきた。1人はベイガン。もう1人は白いローブを着ており、顔や手などを包帯で覆っている。それでも男と分かるのは、声が男性のそれであるからだ。

「ベイガン、明日の戦いではこの兵士を率いてくれ。それと、スカルミリョーネ。」

スカルミリョーネと呼ばれたローブ姿の男がうつむく様に動く。

「ここにある被験者、いくつか連れて行くが良い。お前の好きな様にしろ。」

「は・・。」

短く答え、スカルミリョーネは被験者をあさり始めた。ルゲイエの実験はまだ続きそうだ。
 

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