第11話 大決戦
3月17日 午後6時 プラボカ
 
何とか危機を脱したセシルらは、プラボカに到着し、次の作戦を練っていた。

「もう後がない。次の戦いで負ける訳には・・・。」

「ああ、だがどうする?先の戦いでも被害が出たし、負傷兵も復帰のめどが立たない。唯一の救いは、落伍兵の再編成が済んだって事か。」

「明るい材料といえば、アガルトからの増援か・・・。」「はたして1000人でどれだけ戦況を好転させられるか、だな。」

セシルとカインは絶望的な現状を再認識する。彼らが今居るのは、プラボカのウォルス軍司令所だ。その中の作戦室にいる。そしてその作戦室には、ローザの姿もあった。

「ローザ、負傷兵の回復の具合は?」

カインが尋ねる。それに大変言いずらそうに口を開くローザ。
 
「実はちょっと・・・・。」

「そんなに芳しく(かんばしく)ないのか?」

「そうじゃないの。」

ではどういうことか?しばしの沈黙の後、ローザはやっと口を開いた。

「その負傷兵の数が減ってるの。大量の負傷兵が。」

「それは亡くなったんじゃないのか?」

一同は沈黙する。・・・ゾッとする。それが人として普通だろう。動けもしない負傷兵が、夜な夜な一人、また一人いなくなるのだ。セシルが言う。

「敵、か?」

「だがなぜ兵士の姿を隠すんだ?仮に敵が殺害したとしても、なぜ死体を隠す?」

カインが敵の暗殺説を否定する。確かに仮に敵が暗殺したとして、証拠隠滅として兵士の死体を隠したなら間抜けな話だ。証拠隠滅として行った隠蔽工作が、暗殺したという何よりの証拠となりうるのだから。
 
「ここに運ばれたのは、大体が手のつけようのないくらいの負傷兵ばかりだ。歩く事すらままならないはずだ。」

そんな彼らがどこにいった?とでも言いたげなセシル。カインは、ことあるごとにゴルベーザの名を頭に浮かべる。今回とて例外ではない。

「なぁ、2人とも。まさかとは思うが、ゴルベーザと、行方不明の彼ら、何か関係してるのか?」

「負傷兵に用事があるとでも?」

「私はあっても不思議はないと思うわ。とても近寄りがたくて、何を考えているのか全く分からない。いつも兵舎の地下牢にいるようだし・・・。」

「地下牢?」

セシルが問う。

「ウォルス軍が使っていない、廃屋みたいな兵舎があるの。その地下牢で何かしてるみたい。」

「入る事は出来ないのか?」

ローザは首を横に振る。

「地下に続く扉に負荷がかけられてるようで・・・。」

「用心深いな。余程入って欲しくないようだな?」

「・・・よし、今夜から町中に見回りの兵を出そう。それに兵舎には厳重な警備が必要だ。」

「それでセシル、今後どう動くかだが・・・。何か妙案があるか?」

「おそらく、敵はこのプラボカに攻め入るだろう。僕たちはこれを大通りで迎え撃つ。大通りで戦えば、両サイドが建物だから、こちらは正面だけに気を付ければいい。まず最前列に暗黒騎士と銃兵隊を配置し、その後ろに長槍を持たせた陸兵を配置しよう。これを何重にも重ねて敵をしのごうと思う。」

「竜騎士団は?」

「竜騎士団は遊撃戦力として戦ってもらう。」

「つまり、好き勝手に暴れろ、と?」

「竜騎士の機動力を市街戦でも活かせる最善策と思う。」

「ああ、俺もそう考えていた。これまでの借りを返したくてたまらない。好き勝手に暴れたかったところさ。」

「これで町中は良いとして、あとは敵の動向を探る事だ・・・。斥候を放っておこう。」

そう言うセシルの顔は、疲労の色が隠せないでいた。そして心労も。
 

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