第10話 勝者と敗者
3月17日 午前7時 カーウェン
「さて、昨日の勝利はひとえに皆の結束があったがため。お礼申し上げる。」
まずはドーラのこの言葉から会議が始まる。兵舎の会議室にいるのは、ウォルス軍総司令ドーラと傭兵部隊隊長のカイエン、それに編入されているタイクーン軍を率いるレナとファリス、赤魔道騎士団の一部隊を授かっているバッツ。
そしてウォルス軍の師団長などだった。
「まずは被害報告を。」
これに応じて1人の師団長が報告を始めた。
「はっ。まず、赤魔道騎士団に死者18名、重軽傷者21名。陸軍死者510名、重軽傷者1020名。傭兵部隊に死者は出ておりませんが、39名が重傷を負っております。現状の我が軍の戦力は、約22400人ほどになります。」
別の師団長が敵の被害を報告する。
「敵軍の具体的な被害は不明ですが、推定4000から5000の兵が戦死、重傷を負ったと見られます。」
これはおおむね正しい。カイエンは新手の話題を持ち出す。
「傭兵部隊から密偵を放ったところ、今日中にはアガルトから1000のカルナック軍が増援としてプラボカに到着するようです。」
(こんなに早く敵の情報を掴むなんて・・・。)
まさか、あのシャドウか?バッツは心中で思った。そう言えば宴会の席で見かけなかったし、敵を追撃したと聞いた。
「我々は勝利を収めたとは言え、最終的な勝利を掴んだ訳ではありません。次の一戦で敵をこの国から一掃したいと考えております。我が軍が知悉している地理であるプラボカに攻め入りたいと存じますが・・・。」
会場にどよめきが生じる。
「確かにプラボカならば、我が軍に地の利がありますが、民間への被害が否応なく出てくるでしょう。」
「敵が劣勢となれば、住民を盾代わりにするかも知れませんぞ?そうなれば、数の優位も地の利も、士気も動きも失われます。」
いまだざわめく室内にファリスの声が響く。
「ですが、プラボカで戦えば、住民が一斉蜂起する可能性が出てくるのでは?少なくとも潜伏していた友軍は動いてくれるでしょう。私は市街戦に賛成ですが。」
少々間をおき、ドーラが口を開く。
「バッツ殿は、どう思われるか?」
「はっ、はい。」
いきなりで驚いたが、持論を語り始めた。
「市街戦には賛成ですが、まずはその前に陣地を抑えるべきだと思います。もしこのままプラボカに攻め入れば、プラボカと陣地の敵とで挟み撃ちにあう可能性があると思います。仮に陣地の敵が少数だとしても、それがあの暗黒騎士や竜騎士なら、素通りできないでしょう。」
「付け加えれば、飛空挺を無視すると、街に行軍する間に空襲に遭うやもしれませぬ。やはり、ここはバッツ殿の考えの通り陣地を抑えては?」
カイエンが後押しする。
「では陣地に攻撃を仕掛けるとしよう。」
ドーラは既に決定したかの様な口調で言い放つ。
「まずは敵に出てきてもらわねば。昨日の緒戦の様に上手くおびき寄せ、何もない陣地の外で戦えれば我々に十分な勝機があると思われます。それで、どう敵をおびき出すか、ですが・・・。」
「砲撃を行ってはどうでしょうか?」
意外な人物が、大胆な発案をした。発案者はレナであった。
「あえて至近弾程度にとどめれば、敵に圧力をかける事ができ、かつ撤退してくれるかも知れません。」
「つまりは下手に船体を破壊して、籠城でもされたら困る、と?」
「はい。」
その後、僅かな間をおき、ドーラの作戦の骨組みが完成した。
「では傭兵部隊と、バッツ殿の赤魔道騎士団に加え、我が軍から3000程兵を出し、更に重砲10門による砲撃を行う。歩兵も重砲もあくまで圧力のため。それでも敵が仕掛けるようならこちらも打って出よう。では陣地攻撃を本日正午より開始。各員の一層の健闘を祈る!」