第10話 勝者と敗者
3月16日 午後11時 プラボカ
同日同時刻、カーウェンに凱旋を果たしたウォルス軍は市民からはもとより、町の守備に残った兵士達からもこの上ない歓迎を受けた。一行は早速、町中の宿や兵舎を使い、宴会を催した。起死回生の一戦が、大勝利に終わったのだ。戦った兵はもちろん、市民までもが勝利に酔いしれた。
「はっはっはっ、バッツ殿の戦いようと言えばそれはもう、素晴らしいの一言に尽きよう!拙者もそれに鼓舞され奮闘したでござる!!そして、クラウド殿の敵将の猛追撃はまさしく執念のたまもの!まさしく武人の鏡!!」
普段は寡黙なカイエンだが、酒が入るとたちまち饒舌になる。それは驚きの一言に尽きる。
「ははは、いやぁ、どうも・・・・。」
「どうもこういう雰囲気はな・・・。」
話題に名の上がったバッツは、もはや宴の中心になっていると言って良かった。クラウドも、社交的とは言い難い性格だからか、人の注目を浴びたがらない。そんな事お構いなしに若い英雄達の顔を拝もうとする人々によって、2人は動けず、もみくちゃになってゆく。
その頃レナは宴会の騒ぎを抜け出し、夜風に当たっていた。元々酒をたしなまない彼女にとっては、宴会よりも夜風に当たり夜空を見ていた方が良い。海沿いと言う事あってか、ほのかに香る磯の香りは、故郷のタイクーンの風とは
違う良さがある。細波の醸し出す旋律も耳に心地よい。
「やあ。」
背後の声に振り向くレナ。ファリスである。レナ同様、宴会を抜け駆けしたのだ。
「まだ戦争が続いてる様な騒ぎだぜ、全く。」
「ふふ、それだけ元気がある証拠でしょ?」
「ああ、うちの兵士らも、ウォルス兵の奴らと仲良く飲んでる。ガラフも年なのに、若いのと一緒に飲んで歌ってさ。」
笑いながらファリスは夜風を楽しむ。
「ねえ、姉さん。」
「ん?」
「いつか、この世界から風が完全に失われてしまったら・・・?そうならない様に私たちは、できるのかしら・・・・。
クリスタルを守り抜けるの・・・?」
「どうなのかな・・・。俺にも見当がつかない。けどさ、それよりも今は宴会を楽しもうじゃないか。問題の先送りの様だけど、先の事ばかり考えても仕方がない。そうじゃないか?それに頼れる仲間もいる事だし。」
「・・・うん。」
「さあて、今一度飲んでくる。レナはどうする?」
「私も行くわ。たまにはにぎやかなのも良いわ。」