第10話 勝者と敗者
3月16日 午後11時 プラボカ
バロン・カルナック連合軍の兵舎は、戦場の様な有様だった。先の会戦で、重傷者が雪崩の如くなだれ込み、看護部隊のみならず無傷の兵士や士官までもが手当に追われている。
プラボカからそう離れていない、飛空挺から成る陣地は、比較的軽傷者や、暗黒騎士、竜騎士が白魔道兵らの看護を受けていた。しかしたった200人でその数倍の負傷兵を看護するのは無理があった。やはりここでもプラボカと同様、兵種に関係なく、多くの者が必死で看護している。セシルはカインと共に旗艦司令室で被害報告を受け、改めて被害の甚大さを認識した。
「死者2702人。内、暗黒騎士41人、竜騎士33人、士官50人。重傷者3040人、捕虜推定500人。ひどすぎる・・・。」
「士官を多数失ったのが痛いな。いくら兵がいても有能な士官がいなければ単なる烏合の衆だ。」
「ここは兵種を無視して、混成部隊として再編成しよう。技量の差で、連携が取れないかもしれないけど、まずは数を均一化しなければ。」
「アガルトから兵をいくらか割いてもらうか?確か、2000人のカルナック軍が抑えていたはずだ。半分くらいならなんとかなるかもしれんぞ。」
「そうだね。カルナック軍に掛け合って、こちらに兵を回してもらおう。そうだな・・・。1000人ほどの増援を要請しよう。」
「これで軽傷者が回復すればギリギリ2万にはなるか。まぁ、今はこれで良しとしよう。」
カインは溜息をつき、イスに深く腰掛ける。セシルはそこに頭の隅にあった話題を取り出した。
「そういえば、ベイガンの事だけど・・・。」
「なんだ、あいつがどうした?」
「妙な噂があってね。なんでも殺されたのに生きているとか。」
「見間違いじゃないのか・・・?」
「そういう隊員が1人2人じゃないんだよ。」
「じゃあ、どういうわけなんだ・・・・。」
そこにドアをノックする音が聞こえる。入ってきたのは話題の中心にあるあのベイガンだ。
「アガルトに応援を要請しておきました。明日には1000人の部隊がプラボカに着くでしょう。」
「あ、ああ。ありがとう。丁度僕もそれを考えていたところだ。」
セシルは平静を保つ。カインは探る様な目つきで、黙したままだ。カインは今しかないと口を開いた。
「ベイガン。聞きたい事がある。」
「はっ。何でございましょう。」
今度はセシルが黙する。カインは続けた。
「これは単なる噂だが、セシルの隊でお前が討ち取られたという噂があってな。まぁ、お前がここにいると言う事が、その噂が根も葉もないという事の何よりの証だがな。」
「カイン殿は、私が化け物だとでも言いたいので?」
冗談めかした口調だが、冗談には聞こえない。カインが口を開く前に、ベイガンが更に続ける。
「それは何かの見間違いでございましょう。現に私はこうして生きているではありませんか?」
小馬鹿にする様に言うと、一礼し司令室を足早に去った。