第1話 戦火

 3月8日 午前9時    フィガロ王国 王城 フィガロ城
 
 砂漠に城がたたずんでいる。それは城と言うより、難攻不落の要塞と言った印象を与える様な外見だ。

 フィガロ王国の中心たるフィガロ城だ。黒く、巨大なフィガロ城は太陽の光を反射して、 鈍い光を放っていた。
城は近代的な素材で出来ており、城の至る所で高度な工業技術を見る事ができる。
フィガロ王国は非常に機械技術が発達している。
 そのフィガロ王国の機械技術の結晶とも言えるフィガロ城の王の間に重大な内容の手紙が届いた。
戦争の因子を含んだとんでもない代物である。
 
 「失礼致します。」

 1人の兵士が王の間に入室した。服装からして、その兵士は伝令隊の者だと分かる。兵士は王に一礼する。

 「陛下、ダムシアン王国からの書状であります。」

 「ダムシアンから・・・?」

 陛下と呼ばれた男が声を発した。砂漠のオアシスを想起させる青く澄んだ瞳、太陽の輝きが宿った様な長い金髪、それを束ねる蒼穹のリボン、 整った顔立ち、引き締まった長身、そして王に相応しい、青を基調とした豪奢な着衣。

 彼こそフィガロ王国国王エドガー・ロニ・フィガロである。

 エドガーは少々驚いた。なぜ、ダムシアンから・・・?しかも手紙で・・・。

電話が普及し始めている今、少しずつではあるが連絡の手段が手紙や伝書鳩から 電話に変わりつつある。ダムシアンでは既に電話は連絡の手段の一つになっているハズである。しかし電話は盗聴される危険がある。そのためダムシアンからの書状は伝書鳩によってフィガロ城に届けられたのだ。 つまり、書状の内容は盗聴されると大変困る内容という訳だ。最も、手紙にしても絶対に情報が漏れない訳ではないが。

 「書状を見せてくれ。」

 「はっ。」

 兵士は言うと、エドガーにダムシアンからの書状を手渡した。

 「ありがとう。」

 エドガーは満足そうに言うと、早速封筒の中の書状を手に取り、その内容を確かめる。書状の内容は、行を改めるごとに深刻な物になっていった。エドガーの表情も書状を読んでいる内に段々と曇っていく。

 「陛下、書状には何と・・・。」

 兵士は怪訝な顔でエドガーに問うた。そしてエドガーは兵士の問いに答えた。

 「ダムシアンが占領されたそうだ。しかもあのガストラ帝国とバロンが絡んでいる。」

 「なんですと・・!」

 「事態はきわめて深刻なようだ。バロン軍が全域を制し、残党狩りに躍起になっている。」

 ガストラ帝国とは、フィガロが存在する大陸から、遙か東の大陸に存在する一大軍事大国だ。そしてガストラ帝国は、フィガロをはじめとする同盟の盟主でもある。帝国・フィガロ両国は同盟関係にあるのだ。

 もっともそれは、同盟の名を借りた主従関係だが・・・。
 
 バロンは西の大陸に存在する軍事大国である。今、帝国・バロン両者は緊迫した状態にある。 2、3年ほど前から、両者は衝突を繰り返してきた。 両者の共通する目的は、武力による世界統一。これを成就するためには高い軍事力を持つ国家が邪魔になる。 お互いにそう考え、戦いを始めた。ダムシアンはその闘争の巻き添えを食らう羽目となったのだ。

 「ギルバード王子と残党兵がここを目指している。かくまって欲しいそうだ。」

 「でしたら、急ぎませんと!バロン軍も追撃隊を放っているのでは・・?」

 「だろうな。よし、ジェフリーをここに連れてきてくれ。」

 エドガーが兵士にジェフリーなる者を呼ぶ様に言った。

 「かしこまりました。」

 兵士は王の間を去った。そして数分後・・・。

 
 「ジェフリー・マクラウド、入ります。」 

 エドガーは声の主に入室するように言う。

 「入ってくれ。」

 扉を開け、1人の男がエドガーの目の前に現れた。がっしりとした体格、太くたくましい腕、腰にさげている2つの剣、 騎士らしい精悍な顔立ち、フィガロ軍の将軍の証である勲章。彼こそ、フィガロ軍将軍ジェフリー・マクラウドである。

 ジェフリーはエドガーの前に立ち、礼をする。そして本題に移る。

 「伝令の者から聞きました。ダムシアンがバロンに占領されたそうで・・・。」

 「ああ、その通りだ。生き残った兵がギルバード王子をバロン軍から守りながらこの城を目指している。」

 「陛下が私をお呼びになったのは、ダムシアン軍から追っ手を引き離すためですね?」

 それにエドガーがうなずき、答える。

 「そうだ。それとバロンの者達に猛将ジェフリー・マクラウドの強さを見せつけてきて欲しい。」

 「その役目、喜んでやらせて頂きます。」

 「しっかり頼むよ。で、今お前の第1師団はどれぐらいの兵が動ける?」

 「は・・。約2000人がいつでも出撃出来る状態です。」

 エドガーはジェフリーの答えた数字を聞き、少しの間をあけて言った。

 「わかった。すぐに兵をまとめ出撃してくれ。ダムシアン軍はまっすぐ東に進んでこの城を目指すそうだ。」

 「分かりました。ではすぐに兵をまとめ、出撃致します。」

 「それと、だな。」

 「は?」

 「大事の前だ。今の内に暴れてこい。」

 「了解しましたっ!」

 ジェフリーはエドガーの言葉の意味をつかみ、口に笑みを浮かべ、王の間を後にした。
 
 城門の前には2000人のフィガロ兵チョコボにまたがり一糸乱れず隊列を組み、指揮官であるジェフリーの到着を待っていた。

フィガロ軍はチョコボを使った機動力に富む戦いを得意としている。チョコボとは、この世界の至る所に生息する鳥類である。 鳥でありながら空を飛ぶことが出来ないチョコボだが、その代わりに 非常に足が速く、過酷な環境でも生きていける。その上人間に対して順応である。 兵士が騎乗するには非常に都合がよい動物である。どのような戦場でも、どのような相手にも対抗できる。

 「すまん。待たせてしまったな。」

 指揮官であるジェフリーが2000人の前に現れた。将軍用の特製の鎧兜を身につけ、自分のチョコボにまたがっての登場だ。 そして彼は兵士達の前に立ち、出撃の前に兵士達の士気をあげる。

 「先日我が友好国のダムシアンが、バロン軍に占領された。俺たちはダムシアン軍をしつこく追撃する バロン軍を撃退しなければならない。それと、これは俺の勝手な考えだが、これから俺たちは大きな戦乱に巻き込まれるだろう。 陛下は近々ガストラ帝国との同盟を破棄される様だ!」

 兵士達からは驚きの声が上がった。

 ジェフリーは続けた。

 「今まで俺たちに無理難題を押しつけてきた帝国のご機嫌を伺う事もここまでだ!」

 その言葉に、思わず兵士らは、腹を抱えて笑い始めた。がすぐに戦士の表情に戻る。

 「よし、ではバロンをたたきに行くぞっ!出撃!」

 威勢の良い返事が届く。

 話を終え、ジェフリーは2000人の兵を従えフィガロ砂漠を行く。ダムシアン兵を、ギルバード王子を助けるために。
  
 

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